171 『アワードセレモニー』

 一階、観客席。

 舞台を見て、ミナトが言った。


「サツキ。行こう。表彰式の準備ができたみたいだ」

「うむ」


 すぐ近くに気配を感じて振り返ると、コロッセオのスタッフのお姉さんが呼びに来たところだった。


「お待たせいたしました。サツキさん、ミナトさん。表彰式の準備ができましたので、どうぞお越しください」

「わかりました」


 ミナトが答えて、サツキも立ち上がる。

 ヒナが頬をかきながら、


「ちょっと早いけど、頑張ってくれてありがとね」

「本当にありがとうございました!」


 クコもいっしょになってお礼を言った。照れくさそうなヒナとは反対に、クコはうれしそうだ。

 リラはサツキの背中を優しく押して、


「そういうのはあとでにしましょう? 今は表彰式が先です。たくさんの人を待たせてしまいます。サツキ様、ミナトさん。いってらっしゃいませ」

「うむ。いってくる」


 いっしょにいたみんなが送り出してくれて、二人はスタッフのお姉さんについて行った。

 サツキとミナトの服装は、綺麗になっている。『千の魔法を持つ者』レオーネがその無数に所有する魔法の一つを使って、すっかり元通りにしてくれたのだ。

 舞台に上がると、もうヒヨクとツキヒが待っていた。


「さあ、チャンピオン。表彰台に」


 ヒヨクが手で表彰台を示す。


「身体はもう大丈夫なのかね?」


 サツキが尋ねると、ヒヨクは爽やかに笑った。


「平気だよ。それより、みんな待ってる。キミたちをお祝いしたくて、ほらこんなに声援が溢れてる」

「うむ」


 そして、サツキとミナトが表彰台にのぼると、『司会者』クロノが声を張り上げた。 


「『ゴールデンバディーズ杯』、新チャンピオンが表彰台にのぼりました! 新チャンピオンは、『どうのニュースター』しろさつき選手&『しんそくけんいざなみなと選手のバディーです! コロッセオ参加からわずか数日でこのダブルバトルの大会でトップにのぼりつめ、今、『ゴールデンバディー』であるロメオ選手とレオーネ選手から優勝トロフィーが授与されます!」


 レオーネとロメオがそれぞれ大きなトロフィーと賞金が書かれた大きなカードを持っている。

 サツキがロメオからトロフィーを受け取る。


「おめでとうございます。サツキさん」

「ありがとうございます!」


 ミナトはレオーネから賞金のカードが渡された。


「さすがだね、ミナトくん」

「いやあ、みなさんのおかげです」


 会場からは、鳴り止まない拍手と歓声が送られ、クコたちも「おめでとう」と声をかけていた。

 隣にいたヒヨクとツキヒも、


「二人共、おめでとう!」

「おめ~」


 と祝福してくれる。

 スコットとカーメロは一階席からそれを見ていたが、


「それで、スコットさんはこれからどうしますか?」

 カーメロの問いに、スコットは毅然と答えた。

「オレはもう一度、シングルバトル部門に挑戦してみる。ロメオに挑むために」

「そうですか……」

「だが、ダブルバトル部門も続けたいと思ってる。ダブルバトルでないと見えない景色もある気がしてな」


 カーメロの目が明るく輝く。


「スコットさん」

「だから、カーメロ。またオレと組んで戦ってくれるか?」

「もちろんですよ。次こそは、『ゴールデンバディーズ杯』優勝しましょう」

「ああ。全部薙ぎ払って、オレたちが最強になる」


 今回は準決勝で敗れた二人だが、心はもう次に向かっていた。

 それは、サツキとミナトをすぐそばで見ていたヒヨクとツキヒも同じで、


「ぼくたち、準優勝か。改めて、実感するね」

「最後はごめん、ヒヨク。もう少しだったのに」

「いいんだよ、ツキヒ。先にやられたのはぼくだし、さっき医務室で聞いたところでは、近くダブルバトルの大会がこの『ゴールデンバディーズ杯』以外にも行われるらしい」

「そっか~。じゃあ、そこで勝つっきゃないね~」

「うん! 次こそ、優勝だ」


 舞台上では、レオーネが手の中に忍ばせていたカードを指で挟み、


「さあ! フィナーレだ!」


 カードを空に向かって投げると、上空何十メートルという高さに放られたカードがその姿を変える。カードは花火になった。

 無数の花火が打ち上げられ、マノーラの町中に賑やかな音が鳴り響く。

 会場がさらに沸き、クロノが歓喜の叫びを上げる。


「最高の盛り上がりをみせた今回の『ゴールデンバディーズ杯』も、これにて閉幕です! 参加した選手のみなさん、観戦されたみなさん、二日間、本当にお疲れ様でした! ありがとうございました! 優勝したサツキ選手&ミナト選手、本当におめでとうございます! 次はどんな大会になるか、ご期待ください! ではまた次回、お会いしましょう!」

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