170 『クエスチョントーク』
『司会者』クロノは、盛り上がる会場に声をかけつつ、サツキとミナトがツキヒと話し終えるのを待ってくれていたらしかった。
サツキとミナトが中央にやってくると、さっそくクロノはインタビューを始めた。
「優勝したサツキ選手とミナト選手には、インタビューに答えていただきたいのですが、よろしいでしょうか?」
「ええ。どうぞ」
ミナトが穏やかに答える。
「ありがとうございます! 試合後、ツキヒ選手と話されていましたが、どんなことを?」
「いやあ、おめでとうって言ってもらいました。あと、次は負けないって」
「いいですねえ! ライバルですね!」
「はい、良いライバルができました」
「熱い友情が芽生えた二組! これぞコロッセオです!」
「ですねえ」
にこやかにそう言うミナトに、クロノは問いを向ける。
「ですがミナト選手。サツキ選手には何度もピンチが訪れましたが、ミナト選手はずっと優雅に戦っているように見えましたよね。まだ力を隠しているんじゃないですか?」
「あはは。隠すのは力じゃァなくて手の内です。バトルってそういうものでしょう?」
「さすがはミナト選手! まだ奥の手もありそうな不敵さです! ミナト選手のこれからを思うとワクワクが止まりません! 未だに我々はミナト選手の魔法さえ把握しきれていませんが、レオーネさんの言うように、最後は高速で空へと移動して落下の力を利用したということでいいんですか?」
「そうなりますが、細かいことは秘密です」
「なるほど! ツキヒ選手も客席も出し抜いた戦術と魔法に、これからの活躍をますます期待してしまいます!」
次に、クロノはサツキに向き直る。
「続いてサツキ選手、最後の掌底はものすごい威力でしたね! 風圧だけでヒヨク選手を吹き飛ばしたような、驚くべきパワーでした!」
サツキは、あのパワーを自身で理解しきれていなかった。だからなんと答えるのがよいか迷う。
「あれは、自分でもパワーを制御できなくて。溢れてくる力をコントロールできないので、距離があっても一度《波動》を解放してみることにしたんです」
「みなぎるパワーを試してみようと」
「はい。思った以上のパワーが出ましたが、ヒヨクくんに《
「ですが、追い打ちの拳を振り抜きました」
「体力もなくなっていたので、あそこで畳みかけないと長期戦を戦い抜くことはできませんでした。だから行くしかなかったんです。でも、なんとかヒヨクくんに届いてよかったです」
「サツキ選手もギリギリの戦いだったということですね! 時に、左目が異様な輝きを放っていましたが、あれはサツキ選手の新たな力なのでしょうか」
クロノはそこが一番気になっていた。
つい一試合前のスコット&カーメロ戦でも見せなかった、冴えるほど真っ赤に輝く瞳。あれは尋常ではない。
サツキは小さく苦笑して、
「わかりません。ただ、力のコントロールは今後の課題になりそうです」
「力を使いこなすときが楽しみです! 以上、サツキ選手とミナト選手のインタビューでした!」
続いて、クロノは会場に向かって呼びかけた。
「このあとは表彰式! みなさん、最後までご覧になっていってくださいませ!」
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