169 『セトルバトル』
ツキヒが降参を宣言。
それによって、勝敗が決まった。
「ここで、ツキヒ選手が降参! ヒヨク選手は場外となっているため、二人が共に戦闘不能とみなされます! よって! 『ゴールデンバディーズ杯』決勝は、サツキ選手&ミナト選手の勝利です!」
静まりかえって結果を待っていた観客席から、わーっと歓声が上がった。
「ということで! 強者ぞろいのトーナメントを勝ち抜き、熾烈な準決勝と決勝を制して『ゴールデンバディーズ杯』を優勝したのは……サツキ選手&ミナト選手だあああああ! おめでとう! 本当におめでとうございます! 惜しくも敗れたヒヨク選手&ツキヒ選手も、最高の試合をありがとうございました! 会場の皆様、優勝・準優勝のバディーたちに拍手をお願います!」
サツキがふらついたところで、ミナトが歩み寄り肩に手を添えた。サツキを支えて、
「やったね、サツキ」
「うむ。ミナト、ありがとう」
「こちらこそ。楽しかったよ」
「俺もだ」
ミナトが聞いた。
「だいぶ力を使っていたみたいだけど、大丈夫かい?」
「さっきまで、試合中は力が溢れて仕方なかったんだけど、急に魔力もすっからかんになった感じだ」
「あはは。あれだけやったんだ、普通疲れるよ。表彰式には出られるかな」
「折れた腕まで治すほどの力が、俺の左目に宿っていた。あの力はもうなくなったかもわからない。だが、表彰式の間くらいは立っていられる」
「僕だけで表彰台にのぼってもつまらないし、そうじゃなきゃ困る」
二人が話している間、ツキヒは会場から労いの声や称賛の声が降ってきていることに気づいた。
だが、今のツキヒはそれよりもヒヨクが気になっていた。
ツキヒは顔を上げ、ヒヨクのほうを見る。
――ヒヨク……。
見れば、ヒヨクは担架に乗せられて医療班に運ばれていた。
ミナトがやってきて、
「大丈夫だよ。たいしたダメージじゃない」
「だといいけど」
短く言葉を交わした二人だが、サツキはまずお礼を述べた。
「ツキヒくん。ありがとう。いい試合だった」
「こちらこそ~。ありがとう。サツキ、ミナト。完敗だ~」
「おかげで僕たち、また強くなった」
飄々としたミナトを見ると、ツキヒは笑いたくなった。
「いやいや、ミナトがこれ以上強くなったらヤバイでしょ~。でも、それ以上にヤバイのを相手にするつもりなんだもんね~。感服」
一応、ツキヒはリョウメイからサツキたち士衛組のことは少しだけ聞いている。ミナトが世界最強の四人、『四将』の一人・グランフォード総騎士団長と戦うつもりだと知っていた。
士衛組の戦う相手はアルブレア王国であり、王国の騎士団をまとめる総騎士団長であるグランフォードの存在は避けて通れない。
ツキヒには想像もつかない、強大な相手だ。
だから、その高すぎる目標のためには、こんなところで負けていられないのだろう。
――本物の天才剣士だもんね、ミナトは。活躍、期待してるよ。
小さく呼吸を整えて、ツキヒは言った。
「改めて、おめでとう~。でも……二人共、次は負けないよ~」
「こっちこそ」
ミナトが手を差し出して、その手をツキヒが取って立ち上がる。
「さ、勝者はインタビューに行っておいで~」
ツキヒはサツキとミナトを送り出して、二人がクロノからのインタビューを受けに行く。
「おれたちも強くなって、次のタイトルを目指さないとね~。ね、ヒヨク」
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