161 『カバーファイア』
サツキとヒヨクの戦いは激化していった。
ヒヨクの《
「消えたミナト選手を探すツキヒ選手ですが、サツキ選手とヒヨク選手は互いに果敢な攻めを繰り出しています! しかし、サツキ選手はヒヨク選手の《
観客たちも、サツキとヒヨクの攻防を互角のものとして見ている。
だが、ヒヨクはサツキの持つ得体の知れない《波動》のパワーに苦戦を感じていたし、サツキも正確な突きや蹴りができず力に振り回され隙ができているのを実感していた。
互いに危ういと感じながらの戦いだった。
「会場も熱狂しています! 今か今かとヒヨク選手がつかむのを待つ期待の声と、サツキ選手の連続攻撃がいつヒットするのか見守る緊張感で満ちている! ただ、勢いはサツキ選手にあるか!? 次々に突きと蹴りを繰り出すサツキ選手ですが、有り余るパワーで振り抜くため狙いが定まらないが、当たればものすごい威力になりそうだー!」
ツキヒは、消えたミナトを探しながらも、クロノの実況を耳に入れていた。
どこにいるのかわからないミナトだが、そのミナトにもできるだけ隙を見せないように、ヒヨクとサツキの様子をうかがう。
――クロノさんの言うように、サツキに勢いがある。ヒヨク、押されてる……。
また、ツキヒにはそのほかにもわかることがあった。
――おれは電気信号を扱うからこそ、波長には敏感だ。だからわかる。サツキの《波動》が危険なレベルで強い波長を生み出していることを。さっきよりもまた強くなってる。あれをまとった突きや蹴りをされたらまずいな~……。
あの《波動》は、波状の力であり、それゆえにツキヒはほかのだれよりもサツキの秘めた力の恐ろしさに気づいていた。サツキのようにそれらを可視化はできないが、感覚でわかるのだ。
あれだけ強まった《波動》の力をまとった攻撃がヒットしたら、ヒヨクは相当のダメージを負うことになるだろう。
それは避けたい。
――もう、おれは《シグナルチャック》でしか戦えない。剣もまともに振れない。だからヒヨクがいないと勝てない。だったら、おれがすべきことは一つしかないよね~。
ツキヒは考えをまとめ、決断した。
――いつミナトに斬られても、ヒヨクをサポートするだけだ。そういうわけでサツキ。その心臓、止めさせてもらうよ~。
ミナトの気配には警戒しつつ、ツキヒは《シグナルチャック》を繰り出した。相手は当然サツキである。
――《波動》は止められない。でも、心臓さえ止めればこっちのもの。戦闘不能にする。
しかしサツキもそれは予想していたのか、ツキヒの《シグナルチャック》はよけられてしまう。
――まだ諦めないよ~。
サツキは近距離ではヒヨクを相手にしながら、遠距離攻撃をしてくるツキヒにも対応しなければならない。二対一の状況になった。
「せめぎ合い、綱引きのように優劣つかないバトルをしていたサツキ選手とヒヨク選手ですが、ここでツキヒ選手の《シグナルチャック》が来たー! サツキ選手はよけるが、ツキヒ選手は次から次へと狙っていくー! 二対一になってしまったが、ミナト選手はまだ見えません。どうなっているのでしょうか。さあ、ミナト選手が現れる前に、サツキ選手を戦闘不能にできるのか!? 抜群のコンビネーションに、サツキ選手はどうする!?」
ツキヒは右手で左腕に触れて、対象を変える。
――ヒヨクなら、サツキの腕が一瞬動かないだけでも、その腕を取れる。左手では心臓を狙い、右手ではサツキの左腕を狙う。ミナトが現れるまであと少しだけ時間があれば、おれたちは勝てる。
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