159 『データコレクト』
サツキには、狙いがあった。
その一、データ収集。
可能な限り、ツキヒのデータを集めたい。
――ヒヨクくんとの戦いにも神経を使うが、ツキヒくんの《シグナルチャック》のデータを集めることは急務だ。《シグナルチャック》がどんな波長を飛ばしているのか。見極めたい。
そのためにも、常に《
――《シグナルチャック》は電気信号だ。電気信号は波長を持つ。波形のそれを見比べ、身体のどこに働きかけるとき、どんな波長になるのかを知りたい。俺の《
魔力を可視化できる《緋色ノ魔眼》だが、動体視力も高まるので、電気信号を心電図のように波長でも読み取れるのだ。
――《波動》も波状の力の集まりで、魔力がうねるように回転している。そんな性質上、電気信号の波形にも気づけたが、データとして集めるのは大変だな。
このデータ収集のため、サツキは全方向に神経を張り巡らせる必要があった。
また、ほかにも狙いがある。
その二、魔力の暴走を抑えコントロールすること。
しかしコントロールは簡単じゃない。
――俺の《波動》もどんどん溢れて、魔力の暴走が起こっていると自分でもわかる。ただ、不思議と左目からいくらでも力が供給される感じがある。まだしばらくは体力も大丈夫だと思われる。今はそれを少しでもコントロールできるようにしないと。でないと、急に体力がすっからかんになって気を失ってしまう。そんな不安がよぎるんだ……。
コントロールと並行して《シグナルチャック》のデータ収集が、サツキのすべきことなのだが、器用に《
単純に、《
だからこそ、サツキはミナトに感謝していた。
――ミナトは自分の手の内も見せずによくやっている。助かるよ。
その上で、相手の手の内は引き出しているのだ。つまり、《シグナルチャック》を使わせていた。
――絶妙に隙を与え、距離を取ったり縮めたり、ミナトはツキヒくんの《シグナルチャック》をうまく引き出して戦ってくれている。おかげでいろんな波形を見せてもらえた。それに引き換えツキヒくんは、両肩を斬られて、ミナトと剣で張り合うのが難しくなり、《シグナルチャック》に頼った戦術しかできない。
ツキヒに残されたのは、剣術ではなく《シグナルチャック》での即殺的な機能停止だけであろう。ツキヒの剣筋からもわかる――ツキヒは、ミナトが武器を無効化してすり抜ける魔法が使えることもぼんやりとわかっている。
サツキはそこまで読んで、ツキヒが《シグナルチャック》に徹して、あまつさえヒヨクのサポートとしてサツキを狙ってくることも想定して動いていた。
――《シグナルチャック》は、そうなれば発動回数が余計に増える。ミナトの立ち回りのうまさで、心臓、腕、手、足、耳、目と情報は集まってきた。
主にツキヒが使うのは、そのあたりだろうか。
――戦術的に特に有効で、咄嗟のときに頼りたくなるそれらの波形を押さえたし、もういい頃合いかもしれない。
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