101 『リゲインネーム』
『
万能の武器・ハルバードを巧みに操り、観客たちをあっと驚かせる魔法《スタンド・バイ・ミー》で見応えある試合を演出する。容姿も優れ、すべてにおいて観客たちの注目を集めた。
完璧な勝利を見せることから『
そして、瞬く間にシングルバトル部門で頂上にも登り詰めた。
つまり、バトルマスターになった。
しかしそれはほんの数日のことだった。
数日後、とある挑戦者が現れる。
カーメロよりもあとからコロッセオに参加するようになった魔法戦士で、派手な魔法も使わない、素手で戦う謎の実力者である。
彼こそがロメオだった。
バトルマスターをかけた特別マッチは執り行われ、カーメロは技術の限りを尽くして戦った。
だが、負けた。
その日、バトルマスターの座を過去最短で引きずり落とされたカーメロは、ただ拳だけで戦う戦闘センス抜群のロメオに、『戦闘の天才』の名を奪われたのだった。
最初に感じたのはロメオへの対抗意識であり、ロメオに恨みはなかった。闘争心がかき立てられ、自分の戦闘センスを磨くことを決意する。
――ボクはいつか、彼から『戦闘の天才』の名を取り戻す。そして、最強の座を奪還する。それこそが、パーフェクトだ。
しかしもう一度バトルマスターに挑戦するまで勝ち続けて、ロメオと戦っても、結果は同じだった。また負けたのである。大会に出ても、ロメオには勝てなかった。
なにが足りないのかと考える日々の中で、カーメロはダブルバトルでも活躍するロメオを見る。
――ロメオ、サポートもできるのか。相方のレオーネってやつのバトルは初めて見たが、ボクより派手だ。華やかさの極みというべきか。目立ちたがりで、あいつばかりが目立ってる。気に入らない。だが、ロメオ……あんなサポート技術もあるからこその視野と戦術眼なのだな。
自分にはない技術と自分が持たない世界でのバトルを知り、カーメロは可能性を考える。
――ボクもやるべきか。『戦闘の天才』の名を取り戻すためにも、いろいろなバトルスタイルをものにして、ダブルバトルのサポート役もこなせるようになってみせる。相手探しは難しいかもしれないが……。
そう思っていたある日、カーメロはスコットに声をかけられる。
「カーメロだな。オレはスコット」
「どうも。随分と強いそうですね。『破壊神』でしたか」
「オレは強い。そう信じている。だが、ロメオには勝てない。勝てなかった」
その言葉に、「この人もボクと同じか」と思うが、次になんと言われるかの想像はしていなかった。だから、こう言われたときは驚いた。
「勝てるとすれば、ダブルバトルだ。オレと組まないか。オレを最強にしてほしい」
「……なるほど。いいですよ。スコットさん。ボクもちょうど、彼に勝ちたいと思っていて、別の可能性にも手を伸ばしてみようと思っていたところなんです」
かくして、スコットとカーメロはバディーを組むことになった。
二人での戦いも、すぐに慣れた。戦闘センス抜群かつ飲み込みの早いカーメロには、そのへんのバディーに勝つくらいなんてことはなかった。最初から、負けることもなかった。
数試合もすれば、今まで自分になかった技術が磨かれていることにも気づいたし、十試合を超える頃には、サポートのうまさも評価されるようになっていた。
しかしあるとき、カーメロが試合を見ていると。
観客同士の噂話が聞こえてきた。
「ホント、カーメロってなんでもできてパーフェクトだよな」
「サポートも滅茶苦茶うまいっていうか、サポート役なのに目立ってかっこいいもんな!」
「そこがロメオとの違いか!」
「むしろロメオと組めば最強なんじゃないか?」
そんな声にも、怒りはなかった。ロメオは倒すべき目標であって、恨んでいるわけではないからだ。
「いや、おまえ最近のロメオとレオーネの試合知らない? レオーネがサポート役になるパターンが多いんだぜ?」
「そうそう。サポート役ならレオーネには勝てないだろ、カーメロじゃあ」
「なんなら、レオーネのサポートをするにしても、ロメオには及ばないな。だって、ロメオは『戦闘の天才』だもん」
「そういや、カーメロも『戦闘の天才』って言われてなかったか?」
「だっけか。まあ、ロメオ最強は変わらないってことで、どっちでもいいんじゃね?」
これらの言葉は、カーメロを苛立たせた。最大の屈辱といってもいい。
サポート役を極めたいわけじゃないし、サポート役でもロメオに勝てないと言われたのは、プライドが許せなかった。
だから、カーメロは強く誓った。
――ボクはパーフェクトでなくちゃいけない。ダブルバトルでも勝ってみせるよ、ロメオ。そして、あらゆる技術を身につけたそのとき、ボクはシングルバトルでもキミから最強の座を返してもらおうか。『戦闘の天才』の名と共に!
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