71 『ファーストアンドラストチャンス』
――考えている手が、ないではない。だが、最初の一手がここまで通用しなかったのは、想定外だ。計画を早める必要がある。
サツキは計画を見直す。
当初、サツキは最初の一撃でスコットを行動不能にするほどの致命傷を与える予定だった。
これまで《ダイ・ハード》の硬化によって痛みなどそうそう受けたこともないであろうスコットに、精神的にも大きなダメージを与えられたら、もう勝利はすぐそこだと思っていた。
しかし、あそこまであっさり傷を塞がれるとは思いも寄らなかった。その上、脇腹に突き刺した刀をぐりっと回して傷口を大きくするつもりが、頑強な筋肉がそれをさせてくれなかった。スコットは、《ダイ・ハード》がなくても相当に硬いらしい。
――最終目標、スコットさん打倒の方法は三つある。いずれにしても《
サツキが考える決め手は、以下の三つだ。
その一。直接拳を叩き込み場外へ吹き飛ばす。
その二。掌底で場外へ吹き飛ばす。
その三。腕や足を切り落として戦闘不能にする。
殴り飛ばすか、押し飛ばすか。もしくは斬り落とすか。
三択のうち、斬るのがもっとも難しい。
相手を殺すと失格になるルール上、降参させるか気絶させることになるのだが……そもそも、《ダイ・ハード》相手に斬れるか怪しい。
一度は刀を試したからこそ、スコットが《ダイ・ハード》なしでも硬いことを実感している。しかも、《
――一応、《
これは、《
――だが、《ダイ・ハード》の無効化はあくまで刀に対してのみ。刀がボロボロにならないだけで、刀で触れた物までは魔法効果を無効化できない。したがって、スコットさんに直接《
『その三』が候補から外れることで、『その一』と『その二』の二択に絞られる。殴り飛ばすか押し飛ばすか、この二つならば戦況によって最後の一撃を選ぶだけでよいのだが……。
――ただ、どちらもかなり厳しい。傷を負ったスコットさんを相手にするならまだしも、完全回復している。もう簡単にあの巨大な斧・バトルアックスの支配圏内に潜り込めるほど、警戒が緩むこともないだろう。難易度が跳ね上がってしまった。つまり俺は、最初で最後の絶好の機会を、潰してしまったことになる……。
もし、《
――どのみち、最終手段は決まっているのだ。あとはどのルートを取るのか。そして、どのルートなら切りひらくことができるのか、だ。
相手もサツキが《
余裕に構えるスコットが、ややあごを上げてサツキを見下ろす。
「おまえのグローブに秘密があるようだな。魔法を打ち消せる――ロメオのように。そんなところか。このあとのおまえにどんな策があるかはわからんが、いいだろう。オレのバトルアックスを見せてやる。少々、暴れてやるとするか」
二メートル三センチのスコットより遥かに大きいバトルアックスを、軽々とぐるぐる回してみせる。
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