55 『カーテンライザー』

 選手紹介も終わり、クロノがタイムテーブルを説明すると、九時半の試合開始を待つこととなった。


「すごい活気だね!」

「試合まであと少しだもんね!」


 楽しみだね、とアキとエミが楽しそうにしゃべっている。


「あ! 演奏だ!」

「音楽隊も登場してるよ!」


 アキとエミが教えてくれるが、賑やかな音と共に舞台へとあがっていく音楽隊はみんなの注目を集めていた。

 試合開始までの時間を盛り上げてくれるのだ。


「パレードとかマーチングバンドみたいですね」

「楽しい余興だね、サツキくん」


 クコとアシュリーはこの余興も楽しんでいた。

 パフォーマンスが終わると、いよいよ第一試合の時間が近づいてきた。

 九時半になる三分前。

 再び、『司会者』クロノが舞台に登場した。

 時間になる一分前、もう待ちきれなくなったクロノが声を出す。


「さあ! そろそろ始めるぞー! 第一試合の選手たちに登場してもらおう! どうぞ!」


 第一試合。

 トーナメントのAブロック最終勝者を決める戦いだ。


「第一試合から第四試合は各ブロックのシードバディーと挑戦者バディーのバトルになる! そしてもちろん、Aブロックのシードバディーはこの二人だ! 前回大会優勝バディー、『かいしん胴禁棲健斗ドーキンス・スコット選手、『万能の戦士ミスター・パーフェクト居千河召呂オルセン・カーメロ選手!」


 二人の登場に、会場の盛り上がりは今日最高に達した。このあともっと爆発的な盛り上がりも起こることだろう。だが、会場の二人への期待と信頼は本物だった。

 スコットは、大きな斧・バトルアックスを右手に持ち、いかつい鎧と兜を装備している。背も高く、二〇三センチ。力強い顔には揺るぎがない。二十五歳。

 カーメロは髪がやや長めで、背も一八四センチと高く引き締まった筋肉を持つが、隣のスコットと比べるとスタイリッシュな印象を受ける。万能武器・ハルバードも槍や斧を備えた機能を持つがスマートである。年はロメオやレオーネと同じ二十一歳。


「対するチャレンジャーはこちら! 海の男たち、『コロッセオのポセイドン』来合否丹亜堀鳴キアッピーニ・アポリナーレ選手と『フィッシャーマン』凝地留緒コルッチ・ルーチョ選手!」


 アポリナーレはこれもまた大柄で、ドシンと歩行音が鳴るほどの巨体は二二〇センチと今大会で最大。手に握られたトライデントもスコットのバトルアックス級に大きい。年は三十三歳。

 ルーチョはアポリナーレに比べてだいぶ小柄で、二人並ぶと大人と子供みたいだが、身長は一七六センチ。武器を手に持たず、頭にバンダナをかぶり、海賊か船乗りかといった格好をしている。年は二十歳。

 共に逞しい肉体をしており、スコットとカーメロと向かいあってもパワーでは劣っていないのがわかる。あとは魔法次第だろう。

 双方がにらみ合う。

 スコットが無言で尊大に腕組みして構えているのに対して、アポリナーレはトライデントをぐるりと振り回してアピールし、ルーチョは右の拳を左の手のひらにパシンと当ててやる気を見せる。威圧感を放つ三人とは対照的に、カーメロは手持ち無沙汰とでも言いたげに余裕そうな顔でハルバードの石突きを地面に突き立て、前髪の下から対戦相手二人の全身を観察する。しかし、その眼光は鋭い。


「王者の風格で静かに相手を迎えるスコット選手とカーメロ選手! アポリナーレ選手とルーチョ選手は燃えたぎる闘志を抑えきれないみたいだ!」


 クロノは彼の魔法によってマイク代わりになる水球貝で自分の声を響かせる。


「まずは、早く戦いたくて仕方ないという様子のアポリナーレ選手とルーチョ選手に意気込みを聞いてまいりましょう!」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る