46 『ハードワーカーズ』
サツキたち
帰ってくると、まずは城館の管理人でもある老紳士・グラートに報告して、サツキとミナトは修業を始めた。
「昼間も三試合してきて、よくやるわね」
クールなヒナの横で、クコがルカに声をかける。
「ルカさん、わたしたちもやりましょう!」
「ふふ。クコもやる気ね」
「はい! ルカさんもなにか試したいことなどあれば、やってみてください!」
ちょっぴり驚いた顔でルカはクコを見る。それから微笑した。
「聞いていたのね」
試合を見ているとき、ルカは新しい技の構想を思いついた。それをリラには話したのだが、クコも聞いていたようだ。むしろ、ルカのために修業に誘ってくれたのだとわかった。
「付き合ってもらえるかしら」
「もちろんです!」
クコとルカも修業をしに行った。
そんな仲間たちを見て、バンジョーも腰に手を当てて、
「おっし! オレも料理修業だ! グラートさんに教わっかな!」
とキッチンに向かった。
残った参番隊とヒナは、部屋で少し休むことにした。
リラの部屋に集まっている。
「じゃあ、リラたちはかくれんぼでもしようか」
「了解」
「うん」
隊長であるリラの提案に、チナミとナズナが返事をした。
ヒナは頭の後ろで手を組んで、
「こっちもこっちで元気ね。帰ってすぐに遊ぶなんてさ」
とひとりごちる。
しかし、始まったのはナズナの目隠しから始まるかくれんぼで、鬼のナズナは超音波を使ってリラとチナミを探知し、隠れている場所を見つけるというものだった。
このロマンスジーノ城に来てから三人で考えた修業なのだ。
ヒナはうさぎ耳をぎゅっと握る。
「うわっ、超音波使うなら先に言ってよね!」
特別耳のいいヒナには、常人には聞こえるはずもない超音波も聞こえてしまう。だから驚いた。
「ご、ごめんね。ヒナちゃん」
「いいけどさ。もしかして、なんかの実験か修業?」
「修業、だよ。超音波で、リラちゃんとチナミちゃんを探すの」
「へえ。すごいわね。子供ならではの発想ってやつ? 感心するわ。ま、頑張って。あたしは自分の部屋に戻るから」
うん、とナズナはうなずき、ヒナが部屋を出るとまた超音波を発してかくれんぼを再開したのだった。
ヒナは嘆息する。
「なんにもしてないのあたしだけじゃない。みんな体力ありすぎ。……でも、あたしもちょっとだけ、勉強しておこうかしらね。裁判は近いんだから」
準備のしすぎということはない、と思いヒナは自室に戻った。
ヒナが天文学の勉強していると、まもなくグラートが夕食ができたので呼びに来てくれた。
部屋を出て廊下を歩いているとき、前のほうを
ラファエルとリディオの二人は秘密組織『
主に機密情報を管理している。世界中に五千人以上とも言われる『ASTRA』のメンバーから集まる情報を統括しており、二人は通称『ISコンビ』と呼ばれ、ヒナやサツキよりも二つ年下だった。
二人の会話が聞こえる。
「大会中、失踪者は一組だけ。大会の規模としては少ないね」
「明日も出るかな? 失踪者」
「と思う。意図的に大会参加者を消し去る者がいるとしたら、そいつは目立つことを気にしない。でなければ、こんな大きい大会の参加者を攫うような真似はしない」
「攫ってるんじゃなくて、殺されてるかもしれないぞ」
「可能性としてはね。でも、わざわざ魔法が使える強い人間を狙うのは、利用価値があるからだとボクは思うけどね」
「だよなあ。まあ、この段階でおれたちに推理なんてできないし、あとでロメオ兄ちゃんたちに報告だけしておくか」
「うん」
ヒナは少し足を速めて二人に呼びかける。
「ねえ、あんたたち。ちょっと聞きたいんだけど」
「おお! なんだ?」
リディオが人懐っこい笑顔で振り返った。
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