43 『テイクメジャーズ』
「会場のみなさん、本日は夕方までお付き合いいただきありがとうございました! おかげさまで本日のプログラムも無事にすべて終了しました! というわけで、三回戦まで終わり、四回戦に進むバディー四組が決定したぞー! シードの四組と合わせ、ベスト8が出そろったわけだ! それがこれだー!」
『司会者』クロノがマイク代わりの水球貝で声を響かせ、白い幕に手を向けた。クロノ魔法によって、貝に声を通すとマイクのように会場に響くのだ。
すると、幕にはトーナメント表が映った。
「明日からは前回のベスト4も登場し、ますます盛り上がること必至の『ゴールデンバディーズ杯』! 優勝の栄冠に輝くのはだれなのか! みなさんもぜひ、観に来てくださいね! それでは本日の司会進行はワタクシ、
クロノが手を振りながら舞台から下りていく。
円形闘技場コロッセオからも、どんどん人が去ってゆく。五万人という人々がにぎにぎしいばかりに夕陽の下へとあふれ出ている。
「俺たちは、少ししてから帰ろう」
「はい」
サツキの声に、クコが返事をする。
『ゴールデンバディーズ杯』初日は、つつがなく終了した。
トーナメントは、全68組の参加者のうち60組がその出番を終え、ベスト8が出そろった。
前大会ベスト4だった四組と、今回トーナメントを勝ち上がった四組が、明日の試合でぶつかるのだ。
帰る人たちを見てからサツキに向き直ると、クコは言った。
「サツキ様、ミナトさん。初日が終わりましたね! お疲れ様でした」
続けて、アキとエミも「今日は楽しかったねー!」とか「あとは明日かー」とか言って騒いでいる。バンジョーも「応援ってこんなに楽しいんだな!」と満足そうだ。
「ベスト8に残った参加者のうち、俺たちが知っているのはヒヨクくんとツキヒくんくらいだな」
「やっぱり残ったね。実力からみれば当然だろうけど」
サツキとミナトが注目しているヒヨクとツキヒは危なげなく勝ち進み、ほかのブロックの選手たちよりも余裕の試合を見せていた。
「でも、まずは次の試合の相手だね。いよいよシード枠のバディーとの戦いなんだからさ」
と、シンジが息を荒げる。
アシュリーが言う。
「Bブロックは、前回4位のバディーだったね」
ABCD四つに分かれているブロックの中で、サツキとミナトはBブロックにいるのだ。
このBブロックのシード枠にして前回4位のバディーが、明日のサツキとミナトの対戦相手になる。
ミナトは微笑を浮かべて、
「強いといいなァ」
「どんな選手なんだろうな」
サツキの言葉に、ルカがトーナメント表を書き写したメモを見て言った。
「サルマン選手とナラヤン選手というそうね」
「サルマンさんはルーン地方でもマギア地方も見られるお名前ですが、ナラヤンさんはマギア地方っぽいですね」
リラがルカのメモを見ながらつぶやく。
「ボクの知っていることを話してもいいんだけど、二人はその場で分析して戦いたいんだよね?」
シンジに聞かれて、サツキが答える。
「はい。だから、情報を聞くのは遠慮しておきます」
「でも、強いんですよね?」
相手の強さに興味のあるミナトはそれだけを聞きたがった。シンジは楽しそうに笑って言った。
「もちろん。サツキくんとミナトくんの底知れない強さなら、なんとかなるかもしれない。とにかく期待してるよ」
「その試合は気の済むように好きにやればいいとして、むしろ大事なのはその次の試合と決勝戦だ。スコットくんとカーメロくんは伊達じゃなく強い。彼らをどう攻略するのか、そしてキミたちがライバルとどう戦うのか、ボクはそれを楽しみにしているよ。麗しい試合を見せてほしい」
と、ブリュノはキザに言った。
「そうだね~」
バージニーもうんうんとうなずき、
「戦ったからこそわかるけど、サツキくんとミナトくんが気にするべきはスコットさんとカーメロさんなんじゃないかな。そこに関しては、ちょっとは対策してもいいと思う。調べることも、修業になるわ」
「あのバディーは有名人だから調べる難易度も低いし、修業ならなくない? それより、対策を立てて挑むって修業だと考えるといいかもしれないわよ」
と、マドレーヌも助言してくれた。
サツキはなるほどそういう考えもあるかと思った。
「ありがとうございます」
「いいって。じゃあ、ワタシらはここで」
「またね。明日も応援に来るからね! アタシたちに勝ったからには、最後まで応援してあげるんだから!」
バージニーとマドレーヌは先に帰っていった。
ブリュノもカツカツと足音を鳴らせて歩き出し、鮮やかな動作で振り返る。
「ああ、もう少し語り合いたかったが、キミたちの試合が始まるのは明日。つまり、今日は帰るとするよ。また明日、応援に駆けつけよう。キミたちのために。そして、ほかならぬボクのために。ね」
またひらりと背を向け、ブリュノも帰ってゆく。
アシュリーが尋ねる。
「サツキくんたちは、もう少しお客さんが減ってから帰るの?」
「はい。俺たちも大人数で来ているので、そのほうが歩きやすいですから」
「でも、アキさんとエミさん、もういっちゃったよ」
言われてみれば、あの二人はもういない。ヒナは呆れたように肩をすくめて、
「大丈夫よ、あの二人はじっとしていられないんだから。あとちょっと客が減るまで、座って待ってましょ」
「じゃあ、わたしも待ってるよ」
「あんたは帰っててもいいけど?」
「せっかくだからね」
ということで、士衛組のほか、アシュリーとシンジがいっしょに待ってくれて、それからコロッセオを出たのであった。
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