40 『エディショナルコンシダー』

 ヒナが不満そうな顔で言った。


「で」

「ん?」


 ミナトがなんだろうという顔でヒナを見る。


「なんでこの女たちがサツキの横に来ていっしょに観戦してんのよ!」

「だって~、アタシ、サツキくんのこと気に入っちゃったんだもん! レオーネ様のお話も聞きたいし、いっしょに観戦しようかなって」


 バージニーがニコニコの笑顔で答える。


「賑やかだねー!」

「サツキくんの元には人が集まってくるね! これもサツキくんの力だね!」


 一番賑やかなアキとエミは陽気に楽しんでいる。


「こういうのは賑やかじゃなくて騒がしいっていうの! まったく、困ったものだわ」

「私もそれには同意ですね。本当は静かに見たかったのに」


 と、チナミも賛意を示す。

 チナミは、いつも詰め将棋をいっしょにするときみたいに、自分がサツキの膝の間に座って観戦する姿を、ぽやぁっと想像する。本当はそんなふうに試合を見たかったのだが、士衛組の仲間の前でそれはできない。だが、あのささやかな時間とまではいわずとも、士衛組と関係ない人たちがこんなに集まるのは釈然としない。特にアシュリーとバージニーとマドレーヌ。

 ナズナがサツキに聞いた。


「体力は、大丈夫ですか?」

「少し疲れたけど、今日はもう試合もないし平気さ」

「でも、一応」


 サツキの手を取り、


「ふぅ」


 と、ナズナは手に息を吹きかけた。

 疲労していた手の力が戻っていく。サツキは優しく微笑み、ナズナにお礼を言った。


「ありがとう。おかげで、このあとまた修業できそうだ」

「まずは、ゆっくりしたほうが……」


 慌ててナズナが言うと、サツキはくすりと笑って、


「だな。試合を見ながらゆっくりするさ」

「は、はい」


 リラがナズナをうらやましそうに見て言った。


「いいなあ、リラもなにかしてあげたいわ」


 ルカはクールに諭す。


「それは私もよ、リラ。でも、今はいっしょに試合を見て、気づいたことをサツキに報告。サツキの分析力向上の手伝いをする。それくらいしかないわ」

「ですね。リラたちはそれが精一杯かも」

 そんなリラたちを見て、バージニーはサツキに耳打ちする。

「みんなサツキくんのこと、大好きなんだね。ひゅーひゅー」

「試合まで観に来てくれて。本当、みんな仲間想いなんです」


 と、照れたように答える。

 だが、あくまで仲間としての好意だと受け取っているらしく、バージニーはおかしくなって笑ってしまった。


 ――こういう不器用なところも可愛くて、みんなも放っておけないのかな~。アタシもますますサツキくんのこと好きになってきちゃった。レオーネ様に匹敵しそうだよ。


 バージニーがサツキを見ていると、サツキが顔を向けた。目が合い、サツキは質問する。


「あの。《ダメージチップ》について、隠していること、ありませんか?」

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