38 『アフターアクション』

「さあ! この先の試合がますます楽しみになってきている『ゴールデンバディーズ杯』ですが、気絶してしまっているマドレーヌ選手とバージニー選手は《ダメージチップ》の影響により、残る試合が見られない状態となってしまいました。非常に残念だが、それだけすごい魔法だったということでもあります。彼女たちに勝利したサツキ選手とミナト選手に拍手をーっ!」


 そんなクロノの言葉に、会場はダークホースの二人に期待する声で盛り上がっていた。


「次の試合も期待してるぞー!」

「なかなかヒヤヒヤしたがよかったぜー!」

「次も頑張れよー!」


 中には、サツキとミナトを非難する、彼女たちのファンもいた。


「おい、クロノー! マドレーヌちゃんとバージニーちゃんの心配をもっとしろー! あのサツキとミナトを贔屓してもちあげてんじゃねーぞ!」

「これで本当に勝ったと思うなよ! もっと有利に戦えるはずなのに《ダメージチップ》のことを教えてもらったおかげってこと、忘れてんじゃねえだろうなー!?」

「あんなにバージニーちゃんと触れ合った上に最後は手のひらで触ってんじゃねーよ!」

「サツキくーん、アタシにも《おうしょう》して~! そしたら飛んじゃう~」


 といったような声には、一階席でヒナが「なに文句言ってんのよ! 勝ったのはサツキとミナトの実力だっての! しかも分析のためにかなり力をセーブして! 途中までサツキなんか《波動》も使わなかったってのよ! ていうか、サツキに変な声援送んなー!」と叫んでいる。


「確かに、変な声援が耳障りですね。アンチには帰ってもらいたいところです」

「ええ。あいつらの見たいコンビは脱落したことだし、帰ってくれるといいわね」


 と、チナミとルカも静かに怒る。

 アキとエミたちは素直に喜んでおり、クコとアシュリーは手を合わせている。


「やりましたね!」

「うん、やったね!」


 ブリュノはフフフと笑っていた。


「いいね。見応えのある試合だったよ。ただ、サツキくんにはもっと本気を出してもらいたいところだ。次の試合に期待しよう」

「次の試合……」


 チナミがチラとトーナメント表を見て、ブリュノもそちらに目を移し、


「フ。明日、か」


 とつぶやく。

 クロノはまだまだサツキとミナトについてしゃべりたいのを堪えつつ、この試合を締める。


「サツキ選手が最後、バージニー選手との攻防を10点以内に抑えられた力は《波動》によるものなのか、はたまた換金する隙を与えなかったのか。また、バージニー選手の落下の直前についてなど、聞きたいことはいろいろありますが、ここはぐっと堪えて次の試合に行かなければなりません! まだまだ今日の試合は残っていますからね! ということで、マドレーヌ選手、バージニー選手、ご参加ありがとうございました! サツキ選手、ミナト選手おめでとうございます! 明日の試合にも期待しております!」


 ヒナはそれを聞いて、


「あの司会者、ホントにサツキとミナトが好きなのね」


 とジト目で苦笑する。


「そうみたいですね。サツキ様とミナトさんに目をつけるなんて、やはりたくさんの試合を見てきただけあって見る目があります」


 と、リラも苦笑を返した。


「今日の試合は、もう終わり、だよね?」


 ナズナが尋ねると、リラはうなずく。


「うん。ここで勝って、ベスト8。今日は終わりだよ。それで、明日シード枠のバディーと戦う感じみたいだね。サツキ様とミナトさんが戦うのは、前回第4位っていうお話だから、そこからは厳しい戦いになっていくと思うよ」

「そのあとの準決勝、Aブロックの勝者はおそらく前回優勝のバディーだろうしね」


 と、チナミは言った。


「そっか。明日はずっと大変なんだね」


 心配そうなナズナに、クコが微笑みかける。


「大丈夫ですよ。勝てるように、わたしたちで応援頑張りましょう」

「うん。そうだね、クコちゃん」


 ナズナはうなずいた。


 ――応援するのは得意だから、がんばるぞ。


 みんなの会話を聞いていたアシュリーだが、ふと舞台から下りたばかりのサツキを見てつぶやいた。


「あれ? サツキくん、どうしたんだろう」


 サツキは医療班のいるほうへと歩いていく。

 当然、医療班がいるのはマドレーヌとバージニーが倒れている場所だ。


「お? 心配してんのか?」


 首をひねるバンジョーだが、アキとエミはもう一階席から飛び出してサツキの元へと走っていた。

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