23 『アドマイアードパーソン』
「さあ。始めましょう」
ミナトがそう言うが、バージニーが手をあげる。
「ちょっと待ってー。アタシからお願いがあるの」
「お願い、ですか」
サツキは警戒する。
会話や視線など、特定の
だが、バージニーはなにかを仕掛ける様子ではない。まだサツキと話したいようで、質問をしてくる。
「ねえ、キミって、レオーネ様とお友だちってことみたいだけど、ほんと?」
「はい。そうですが」
「じゃあ、アタシが勝ったら~……レオーネ様と会わせてくれない? アタシの憧れなの! アタシがコロッセオに挑戦する目的は、レオーネ様に認めてもらうことだから。この試合って、レオーネ様とお近づきになるチャンスでしょ」
バージニーのお願いとは、レオーネと会わせることだったようだ。
ファンなのか、ただの尊敬なのか、それはよくわからないが、サツキはきっぱりと言った。
「この大会で勝てば会えますよ。俺からは、頼むことはできても約束はできません」
「そっか~。確かにそうなんだけどね。アタシ、そっちのマドレーヌと違って気が強くないし、今回優勝する自信まではなかったんだ。でも、そうよね。勝てばいいのよね。まずはキミたちに」
「勝たせませんけど」
「ふふ。そうこなくちゃ」
にこりと笑顔になるバージニーに、マドレーヌが注意する。
「なにこの子のこと気に入ってるの。やるよ」
「はーい。いつも付き合ってくれてありがとね、マドレーヌちゃん」
「いいって。ワタシら、幼馴染みじゃん」
幼馴染み同士、二人は気の合う親友だった。
二人がコロッセオに挑戦する目的は、バージニーの言うように、レオーネに認めてもらってお近づきになるため。マドレーヌはレオーネに興味ないが、親友のために、そしてついでに賞金を稼ぐためにも参加しているのだ。
参加するようになっても、バージニーの目的は変わらないし、憧れのレオーネに近づくために頑張っている。
しかし、マドレーヌはいつしかちゃんと強くなりたいとも思うようになっていた。
――こうして応援してくれるファンがたくさんいる。今までそんな経験なかったから、すごく嬉しい。感謝してる。だから、応援してくれるファンのためにも強くなりたい。ファンを楽しませて、期待に応えられる、胸を張れる自分でいたい。そのためにも、ぽっと出のルーキーなんかには負けないよ。
舞台では、会話の切れ目を見つけた『司会者』クロノが進行に戻す。
「さあ! 剣士同士の戦いを望むミナト選手が、マドレーヌ選手にどう立ち向かうのか! そして、バージニー選手はサツキ選手を気に入ってしまったようだが、二人はいつもの戦いができるのか! じゃあ、試合を始めていくぞー!」
サツキへのヤジと共に試合の開始を待ち望む観客たちからわーっと声が上がったところで、クロノは試合開始を宣言した。
「それでは、マドレーヌ選手&バージニー選手対サツキ選手&ミナト選手の試合を行います! レディ、ファイト!」
試合が始まった。
だが、マドレーヌとミナトは動かない。
サツキもまずは観察しようとしていた。
バージニーはニコニコとサツキとミナトのほうへと歩いていき、
「いい試合にしようね。握手」
と手を差し伸べた。
警戒するサツキの手を強引に取ってぎゅっと握り、続いてミナトの手を握った。
「よろしくね」
「よろしくお願いします」
ミナトがにこりとして返して、バージニーはさっと距離を取る。
「もういいでしょ、試合は始まってるよ。バージニー」
「わかってる。じゃあ行くよ」
そして、バージニーは手を上げてサツキとミナトに呼びかけた。
「はい、注目~! 今回の試合では、最初から魔法を使っていこうと思いま~す! それで、サツキくんとミナトくんにはアタシの魔法の説明をしてあげま~す!」
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