21 『ビューティーコンビ』

 二回戦も各ブロックで終わり。

 各バディーにとって本日最後の試合、三回戦の時間となった。

 かくいうサツキとミナトの試合も、次に迫っていた。

 スタッフのお姉さんに連れられて歩きながら、ミナトが聞く。


「次はどんな人たちだろう」

「さっき見てただろ」


 次の対戦相手は33番。サツキとミナトが24番だから、いつも二人の試合のあとの組として試合をしていた。だから前の試合は後半を少しだけしか見られなかったが、その前の初戦は普通に見ていたのだ。しかしミナトはちゃんと見ていなかったらしい。


「いやあ、うっかりしていて、覚えてないんだ」

「俺たちの第一試合の前の組だった。カジノのディーラーみたいな足技使いと女剣士のコンビだ」

「へえ。剣士か」


 同じ剣士として、その女剣士が気になるらしい。だが、サツキの見立てが正しければ、ミナトを満足させられる剣士じゃない。

 スタッフのお姉さんが言う。


「それでは、しばらくお待ちください」


 試合の展開によるが、ここで待つ時間もそう長いものじゃない。

 前の組の試合も、数分で終わった。


「おや。そろそろか」

「だな」


 前の組の選手たちが舞台を下りる。

 すると、さっそく相手側の選手二人が舞台に歩いていった。

 声援は大きい。男性ファンたちによる声援が大半だった。なぜなら、その選手二人は美女だったからである。

 舞台へと上がる彼女たちを、『司会者』クロノが紹介していく。


「続いて、すごい声援を浴びながら登場するのは、コロッセオ屈指の美女コンビ! 振諏窓玲貫ブルーシュ・マドレーヌ選手と種針江葉子丹シュヴァリエ・バージニー選手だー! その美貌に魅了された男性ファンも多いが、もちろん実力は本物だぞ! 一回戦、二回戦は順調に勝ち進み、三回戦ではあのダークホースとの対決だ!」


 ミナトは女剣士のほうを見て、


「あれか」


 とだけつぶやく。


「行くぞ」

「はいよ」


 サツキとミナトも暗い通路から出て、舞台へと向かう。


 ――おもしろい剣を持ってる。ちょっと楽しみだなァ。


 女剣士の波打った刀身の剣を見て、ミナトは期待した。

 クロノはサツキとミナトの二人を見ると、紹介を再開した。


「おーっと!? 話しているうちに姿を現してくれたぞ! 今大会の台風の目、しろさつき選手といざなみなと選手の登場だー! 一回戦ではベスト8確実かと思われたカルロス選手とデイル選手を相手に圧倒! キミたちの持つ底知れぬパワーを、この試合でも見せてくれ!」


 サツキとミナトに送られる声援は男女どちらからのものも半々くらいな印象だ。ただ、ルーキーを応援してくれているもので、根強いファンがいるわけでもない感じだが。

 舞台に立ち、足を止めたサツキとミナトに、マドレーヌとバージニーがしゃべりかけてきた。


「あら。可愛い坊やたちねっ」

「でも、やる気満々って顔」

「こんな可愛い子たちを痛めつけるなんて、本当はしなくないんだけど……ちょっとだけ、ゾクゾクしちゃう」

「バージニーはともかく、ワタシは手加減しないから」


 と女剣士は言った。

 どうやら、女剣士のほうがマドレーヌで、カジノのディーラーのほうがバージニーというらしい。

 二人は共に二十歳。マドレーヌが一七一センチの長身で、バージニーは一六五センチほど。

 バージニーは妖艶な笑みで唇に人差し指を当てて、


「お姉さんたちが可愛がってあげるね」


 とウインクした。

 ミナトはバージニーを無視してマドレーヌに言う。


「おもしろい剣ですねえ。刀身が波打ってる」

「これ? 知らないの? フランベルジュっていうの。こいつでズタボロにしてあげんよ」

「へえ」


 やれるものならやってみろという顔でミナトが薄い微笑を浮かべた。

 サツキはバージニーを見る。


 ――ミナトがマドレーヌさんを相手にするなら、俺はバージニーさんか。やりにくそうだ。前の試合から、蹴りが得意な足技使いであることはわかる。だが、魔法は見せてくれなかった。


 ほかに、目に見える場所に武器は持っていない。

 空手を得意とするサツキとは、肉弾戦になると予想される。

 しかし、それも相手の魔法次第。

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