77 『ファイティングポリシー』
「本日もお越しいただきありがとうございます! これより、午後の部、魔法戦士たちの戦いを始めます! 司会はワタシ
舞台に上がってきた『司会者』クロノが、本日の日程を話してくれた。
ダブルバトル部門の大会『ゴールデンバディーズ杯』直前とあって、ダブルバトル部門の試合数の多さに観客たちも喜んでいる。
「明日はダブルバトル部門の大会である『ゴールデンバディーズ杯』が開催されますし、本日のダブルバトル部門は盛り上がること間違いなし! 今日の参加者たちの中から、どれだけの選手が『ゴールデンバディーズ杯』への出場権をゲットできるのか。そこにも注目が集まります! さあ、それでは、さっそく試合に参りましょう!」
開幕の合図を受け、サツキは暗い通路から出て行った。
第一試合の出場となるサツキの姿に、すでにサツキを知ってくれている観客たちから声援が送られる。
「頑張れよー!」
「サツキくーん!」
「ダブルバトルにも出るんだろうなー? シングルバトル部もダブルバトルも気張ってけー!」
「待ってたぞ、ルーキー!」
「応援してるからね、サツキくーん!」
クロノがサツキの登場を実況する。
「本日の初戦は、『波動のニュースター』
サツキが舞台に上がると。
反対側から対戦相手がやってきた。
武闘家のようである。
「さあ! サツキ選手と対戦するのは、
趨之国は、古代
三国時代に突入したことで力も分散されてはいるが、三国の中でもっとも力のある黎之国は依然強大な国という印象だ。
クコやリラたちアルブレア王国王家から実権を奪っている大臣・ブロッキニオも黎之国と関わりが深いと聞くし、サツキにとって注意すべき国であることは間違いない。
ただし、この柏放の出身国である趨之国は
「空手を得意とするサツキ選手とは、武闘家同士の激しい戦いが期待されています!
柏放が舞台に上がった。
勝率から見て、かなりの実力者だろう。
武闘家らしい服装、背は一七五センチほどで無駄のない筋肉を持ち、しなやかな印象である。ただパワーだけで勝ってきたタイプとも思えない。年も若く、まだ二十二歳。
「最初に言っておく」
いきなり、柏放がサツキを指差した。
「私は魔法は使わない。武術だけで勝負する」
「魔法を、使わない……」
心理戦だろうか、とサツキが思っていると、『司会者』クロノの解説が横から入ってくる。
「出たー! 柏放選手の魔法は使わない宣言! これまで、すべての試合で魔法を使うことなく戦ってきた柏放選手おなじみの宣言です! だが、柏放選手は魔法が使えないんじゃなくて、使わないだけだ! 勘違いしてはいけないぞー! 戦いよりも日常に便利な魔法ということですが、それ以上の言及はマナー違反だ! 紳士にいこうぜ!」
ひとりでそんなことまでぺらぺらしゃべっておきながら、言及はマナー違反も紳士にいこうもないとサツキは思うのだが、元より詮索するつもりもない。
柏放はクロノの解説が終わると、またサツキに言った。
「もう一つ、言っておく。私は魔法を使わないが、それは私のこだわりであって、対戦相手にも魔法の使用を控えさせるものではない。魔法は自由に使ってくれて構わない。魔法によって強くなるなら、魔法を使って全力で戦って欲しい。それを負けたときの言い訳にされたら敵わないからな」
「わかりました。そういうことなら、魔法を使わせてもらいます」
そうサツキが返すと、クロノがまとめる。
「柏放選手はポリシーで魔法を使わないが、相手にも同じことを求めない。むしろ、あとからの言い訳にされたくないという考えです。そのため、サツキ選手に魔法の使用を勧め、サツキ選手もそれに応じて魔法を使うと答えました。さて、これでお互い準備は整ったでしょうか」
クロノが順番に柏放とサツキを見ると、
「問題ない」
「はい」
と柏放とサツキが答えた。
口元に笑みを浮かべてクロノがうなずき、会場全体に呼びかけた。
「さあ! 両者準備はオーケーのようだ! ここイストリア王国マノーラより遥か東方の地から来てくれた二人の魔法戦士同士の戦いが、いよいよ始まるぞー! サツキ選手対柏放選手、勝つのはどちらなのか! それでは、本日の初戦、開始だー! レディ、ファイト!」
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