43 『インフォメーションシェアリング』
サツキの質問は、失踪者の情報があったのかというものだ。
これに、リディオは「ん?」と疑問を持った。
「失踪したのはコロッセオに出場する予定の魔法戦士だったけど、失踪は直前じゃなかったから不戦勝とかもなかったよな?」
であれば、本来一般の人間が知り得ない情報なのである。
「どこかで聞いた、ということだろう。ですよね、サツキさん?」
ラファエルの問いに、サツキはうなずいた。
「うむ。帰り道、マノーラ騎士二人がしゃべっているのを小耳に挟んだ。参加者が失踪した、と。観客の一人がその失踪者と友人で、今日試合するからと観戦に誘ったらしい。参加申請も一週間前にしたが、今日になって連絡もなかったようだ」
「ええ。我々に入っている情報と一致しています。ちなみに、我々はマノーラ騎士団と町に散らばっている仲間からの報告がありました。仲間は二人それぞれが別の場所で情報を仕入れてくれたので、信憑性も高いといってよいでしょう」
「でも、サツキ兄ちゃん。それを調べてどうするんだ? おれたち『
リディオの疑問に、ラファエルが横から口を挟む。
「たぶん、一つにはボクら『
「やさしいな、サツキ兄ちゃんっ」
「いや。『
「事件が?」
「それもある。むしろ、それよりも明日のことだな」
「明日、ですか」
ラファエルが意外そうな顔をした。
「さっき、エミさんが占ってくれただろう? あの結果が当たるかどうかはわからない。しかし、もし本当に当たったら、明日はミナトが不戦勝になる。つまり……」
「そうか。ミナトさんの相手選手が、当日のエントリーを済ませたあとになって失踪する、という可能性もあるわけですね」
「うむ」
サツキはラファエルの頭の回転に感心した。
――やっぱりラファエルは察しがいい。
さて、とサツキは本題を述べた。
「『
「リディオがうっかりそんなことまで言うから、サツキさんを巻き込んでしまったみたいだね」
「おれたち情報を守るチームなのにな」
あはは、とおかしそうに笑うリディオを見て、ラファエルは嘆息した。
「相手がサツキさんだからいいけど、次回からはもう少し慎重になってくれ」
「おう。でも、そんなこと今はいいだろ? 明日の事件のほうが先だぞ」
「そうだね。ただ、レオーネさんとロメオさんは明日も用事がある。ミナトさんの対戦相手も直前にならないとわからないし開示もされない。対策がほとんど打てないのも事実だ」
「どうする? ラファエル?」
ラファエルはチラとサツキを見る。
――この人。士衛組の局長ってだけあって、相当に切れる。特に推理力はレオーネさんに匹敵するかも。だけど、この件は親切心で可能性を教えてくれただけ。意見まで求めるのも……。
サツキは視線を受けて、口を開いた。
「解決を自分たちだけですることはないんじゃないかな。レオーネさんとロメオさんに相談して、明日はコロッセオの周囲に見張りを立て、情報を集める。失踪者がどこへ連れて行かれるのか。追えたら追ってもらう。『
「まずは情報収集ですか。そうですね。結局それが解決への近道かもしれません。そしてそれが、ボクら情報屋のやり方、ですね。このあと、レオーネさんとロメオさんにも相談してみましょう」
「そうだな。そうしよう!」
ラファエルとリディオの意見が固まり、二人はサツキにこの一ヶ月の失踪事件について教えてくれた。
「今回で三件目。すべてがコロッセオの参加者です。うち、不戦勝って形で直前に消えた選手は一人。あとは参加が決まっていたけどその日出場しなかった人。また、コロッセオに参加したことのある人が、別途一人失踪しています」
名前などの情報が書かれた紙を、ラファエルがリディオに渡すと、
「この紙はあげられないけど、なんとなく頭に入れてもらって、なにかわかったら教えてくれ」
と、リディオがサツキに差し出した。
「ふむ。わかった」
「この人はな、剣を使うんだけど――」
リディオがいろいろと選手の特徴を教えてくれて、一人につき一分ほどの説明を受けた。
サツキは紙を返し、二人を眺めて、
――いいコンビだな。この二人も。これからどんどん成長するだろうし、士衛組の仲間ってことも心強いよ。
席を立って部屋を辞す。
「そろそろ俺は失礼するよ。情報もありがとう」
そう言うサツキの背中に、ラファエルとリディオもお礼の言葉がかかる。
「こちらこそ。ありがとうございました」
「ありがとうな! サツキ兄ちゃんっ。今度また遊ぼう」
ひらと手を振り、サツキは廊下に出た。
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