41 『テラークリスタル』
アキとエミは、昼間も食べ歩きをしたきたというのに、夕飯もしっかり食べていた。
お酒も好きな二人だから、よく食べるしよく飲む。サツキも感心してしまうほどだ。
だが、よく食べるのはサツキもだった。
「サツキ様、もりもり食べていて偉いです。たくさん頑張ってきた証ですね」
にこにことクコがサツキを眺めて褒めてくれた。そこで初めてサツキも自分がいつも以上に食べていたことに気づく。
「試合よりも見ている時間のほうが長かったんだけど、お腹は空いていたのかもしれない」
ちょっと照れたようにサツキが答える。
ミナトはくっと喉奥で笑って、
「食べるだけで褒められるなんて。サツキを甘やかし過ぎですぜ、副長」
「そんなことありませんよ。ふふ」
クコにとっては確かに通常運転だ。
それはみんなもわかっているが、ヒナは条件反射のようにつっこむ。
「そんなことあるわよっ! 褒めるなら頑張って修業してきたことを褒めなさいよね」
「試合のほうは、どんな調子だった?」
レオーネに聞かれて、サツキが答える。
「はい。シングルバトル部門は俺もミナトも手強い相手と戦えて勉強になりましたし、ダブルバトル部門も戦ったことないような使い手とやれました」
「どちらも勝ちましたよ。反省点もたくさんありましたけど」
ミナトが穏やかに微笑む。
ロメオは「なるほど」とつぶやいた。
「よい修業になっているようですね。コロッセオを勧めた甲斐があります」
「潜在能力の解放だけでは気づけない変化を、実践によって知ることもある。ここでの経験はキミたちを成長させるよ。きっと」
サツキとミナトは「はい」と返事をした。
このあと、試合の内容についても話して、興味を持ったアキとエミがおかしな提案をしてきた。
「じゃあ、占ってあげるよ」
「エミさん、占いなんてできるんですか?」
唐突なエミの占い宣言に、サツキは驚いた。
エミが照れたように頭の後ろをかく。
「えへへ。占いができる水晶が売ってたから買ってみたんだ。じゃじゃーん、《
「当たるかはわからないけど、おもしろそうだねって話になってさ。一応、魔法道具みたい」
アキの教えてくれたことによると、魔法道具を使って占ってくれるらしい。
「でも、占う人の実力が結果に反映されるから、当たるかはアタシ次第なんだよ」
「そういうこと。エミに任せて占ってもらいなよ」
「はい」
「楽しそうだなァ。ボクもお願いしますね」
サツキとミナトが待っていると、エミが水晶に手のひらを近づけて占いを始めた。
「いくよー」
力んではいないみたいだが、真剣な顔をして「ん~」と何度も言って水晶の中を覗き込んでいる。
「わかった。サツキくんは明日、勝てる!」
「おお、やったね! サツキくん」
エミの占い結果が出て、アキが親指を立ててウインクする。
「次はミナトくんだね」
また「ん~」と水晶の中を覗き込んで、首をひねった。
「ん?」
「どうしたんです? エミさん」
ミナトに聞かれて、エミは「ん~」と水晶の見ながら答えた。
「たぶんだけど、これはミナトくんも勝てるってことなんだと思う。でも、戦わないで勝ってる」
「ミナトくんすごい! さすがだよ、ミナトくん」
「いやあ、それって不戦勝って話じゃないかなあ」
エミとアキにそう返して、ミナトは小さく笑った。
「そうかも。まあ、アタシの占いがどこまで当たるかわからないけど、明日もバッチリ大丈夫ってことだね!」
「おめでとう、二人共!」
適当なエミとアキに、
「なにただ油断させること言ってるのよ!? おめでとうは気が早いからっ」
とヒナがつっこみ、サツキとミナトは苦笑した。
このあと、リディオとバンジョーが前に出て、
「おれも占って欲しいぞ」
「こっちも頼むぜ!」
と立候補するが、ヒナがジト目で二人を見てつっこむ。
「あんたたち、なにを占ってもらうのよ?」
「そういえば、占ってほしいことなんかなかったぞ」
「オレもじゃねえか」
はあ、とヒナがため息をついた。ラファエルも「だろうね」とつぶやき、玄内はバンジョーに「悩みがないのがおまえのいいところだが、なにも考えてないのがおまえの悪いところだな」とぼやくように言った。
チナミがヒナを見上げて尋ねる。
「ヒナさんはいいんですか? 裁判のこと」
「こいつらの適当な占いの結果、さっき聞いたばっかりでしょ? どうせなんにもわからないわよ」
「でも、一応、聞いてみたら? ヒナちゃん」
ナズナにも勧められ、チナミもそうだとうなずくので、
「じゃ、じゃあ、しょうがないわね」
と腕組みして、ちょこちょことエミに近づき、それとなく聞いてみる。
「で、さ。エミ。あたし、地動説の裁判が今度あるんだけど、それはどうなりそうなの?」
「占ってみるね、ヒナちゃん!」
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