26 『ニューアーツ』
一振りすれば、なにかを斬らずにはいられない怪刀で、斬撃を飛ばすような奇妙かつ厄介な性能を持つ。
それを相手に、『ソードブレイカー』エヴァンゲロスは剣を構えたまま駆け出した。
「《
「腹が減ったな」
と、エヴァンゲロスが刀身に生み出した魔法の顔、《
金属を磁石のように引き寄せる魔法、《
加えて。
剣に浮かび上がった顔が、捉えた金属を喰らう《
ミナトは刀を下げたまま自然体に立ち、距離が詰まるのを待つ。
両者の距離が、五メートルを切る。
「では、参ります。《
動いた。
居合い。
横に一閃、空を斬る。
タイミングは、エヴァンゲロスがミナトの前に到着する四メートル手前で、当然剣先がエヴァンゲロスに届くはずもない。
だが。
エヴァンゲロスの剣に浮かんだ魔法の顔、《
この《
コントロールは以前よりもできるようになっており、力のまま戦艦を真っ二つに斬った頃に比べると、今この試合では狙った獲物だけを斬れた。
歯が割れた《
「エヴァンゲロス選手の《
状況は、クロノの解説通りだった。
妖魔の顔面が崩れ、《
「おおおおおおおおぉ!」
「ぐ」
刀と剣がぶつかり合う。つばぜり合いの形になったところで、クロノがまた実況を挟む。
「受けたー! ミナト選手、よく受け止めました! それにしても、ミナト選手の攻撃はどうなったというのでしょう! 斬撃を飛ばしたようにも見えましたが、把握はしきれません。また、《
刃を合わせながら、エヴァンゲロスはミナトを讃えた。
「腕力もかなりのもの! やるな!」
「そちらも」
ミナトは力を入れた。エヴァンゲロスも力を込めて、両者が互いのパワーで吹き飛ぶように下がった。
距離がまたできたところで、何度かエヴァンゲロスが突撃して刃と刃を合わせた。キン、キン、キンと金属音が響く。
「すごいぶつかり合いだー! エヴァンゲロス選手、ミナト選手、どちらも譲らない! しかし驚きました。剛力のエヴァンゲロス選手を相手に、ミナト選手が力で渡り合うなんて、あの小さな身体にどれだけのパワーが隠されているんだー!?」
斬撃が飛ぶような素振りはその間なかったが、十メートルほどの距離を保って、双方が息を整えたところで、
「何度か試してみて、わかったように思います。この刀の息づかいみたいなものが。呼吸を合わせて戦えば、乱暴なばかりの刀でもないようです」
「わかったのが、息づかいと呼吸か。不思議なことを言うものだ。
「晴和人のお知り合いでもいるんですか?」
「以前にここで戦った晴和人の剣士が、そんなようなことを言ってただけだ。その少年は、ダブルバトル部門に戦場を移したがな」
「へえ」
ミナトは刀を鞘に戻した。
「また、剣を変えるのか?」
問われて、ミナトはゆるく首を左右に振った。後ろでまとめた髪が揺れる。
「いいえ。空間を斬る居合いで、決めようと思いまして」
「そうか。そんな技が」
「新たな技を初お披露目です」
「なるほど。その技がどのようなものか、試してやろう。いくぞ! 《
エヴァンゲロスが剣を掲げると、剣に浮かんでいた崩れた顔が、元の形に戻っていった。ミナトの攻撃で割れた歯も、きれいに生えかわっている。
「決めるぞ!」
走り出したエヴァンゲロス。
すかさず実況も入る。
「《
静かに腰を落とし、ミナトはつぶやいた。
「《
その場で、空を斬る居合い。
さっきの《
だが、ミナトが刀を鞘に収めたときには、カチンと音を立てるとの同時に、走り来るエヴァンゲロスの剣が折れて身体からも血が噴き出していた。
「ぐおおっ!」
エヴァンゲロスが声をあげて倒れる。
クロノが判定した。
「斬れたあああああ! エヴァンゲロス選手、剣もろともミナト選手に斬られてしまったあああ! すでにエヴァンゲロス選手は気を失っており、戦闘不能になっています。これによって、ミナト選手の勝利だー!」
会場は、ミナトの勝利に観客たちが沸いた。
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