幕間紀行 『ファントムケイブシティー(13)』
サツキがミナトと尾行した結果、そしてフウサイと話した内容とそこから考えられることをまとめて、
話を聞いて、町の少年・ジッロが驚いた。
「すごいね、忍者って。そんなことまで聞き出せるなんて」
「『
その計画名を聞いて、クコは自分も早くなにかしたいのか意気込んでいる。
ヒナは立ち上がった。
「ま、次にやるべきは作戦を立てること。すぐにできることじゃないわ。まずはごはんにしましょう」
「そうだな! オレがおばあさんといっしょに作ったんだぜ。うめえから食ってくれ」
「ああ。飯が先だな。サツキ、ミナト。おまえらもまずは休め」
バンジョーと玄内にも言われて、二人は「はい」と返事をした。
少し早めの夕飯は、トマト料理だった。
イストリア王国の南部は、北部に比べても温かい気候のおかげで、トマトやオリーブの栽培に適している。トマトとオリーブオイルをよく使うのは南部料理の特徴であり、パスタやピザなどがメインとなる。
調理もシンプルで、おいしい野菜の味が楽しめる。
すっかりお腹も膨れて、食後のデザートまでいただいた。これには士衛組ばかりでなくジッロも喜んでいた。
綺麗になったテーブルには、飲み物だけが並んでいる。
局長として、サツキが切り出した。
「さて。食事もいただいたし、これから作戦会議を始めたいと思います。しかし、相手に関する情報がほとんどないので詳しい戦術も話せません。そんな中でも、魔法が使えないこと、『あのお方』という存在を倒すこと、操られている人を傷つけずに戦わなければならないこと、この三つは前提になります」
「まず、魔法結界の種類や性質は調べていないが、おれがなんとかできるかもしれねえ。戦闘に魔法を使うことは考えていい」
と、玄内が言ってくれた。
「助かります。さすが先生です」
リラがうれしそうな眼差しを玄内に向ける。
士衛組が
「やっぱり頼りになりますね」
病気がちなリラをいつも診てくれていた玄内だから、余計に頼もしく思えた。
「まあ、おれのスタンスは出過ぎずこいつらを見守ること。ちょっとした手助けをしてやるだけだと思ってくれ。リラ、おまえもしっかり考えて戦うんだぞ」
「はいっ」
明るい返事をするリラを横目に見て、ヒナはぼやくように言った。
「まったく、ルカといい先生までリラには甘いんだから」
「厳しさも愛情といいますよ」
チナミが小声でフォローする。
「厳しすぎるのよっ!」
「うるせえぞ。人んちで騒ぐな」
「はい!」
ダンディーな声で指導され、ピシッとした返事をするヒナである。
ルカがサツキに言った。
「現状、情報が少ないことは確かだわ。『あのお方』っていうのと戦うことは避けられないと思うし、相手の特徴を知りたいわね」
「うむ。扱う魔法まではわからなくとも、なにも知らない敵地へ無策で乗り込むのはよくない」
クコも同意する。
「このまま、ただ戦いに臨むのは分が悪いですね。一つだけでも戦術を用意したいです。これまでのお話から、なにか手がかりがあればよいのですが……」
「あ……か、かえる……」
ナズナがなにかに気づき、側にいるクコに抱きついた。見れば、手のひらくらいの大きさのカエルがいた。
「かえる? あら! 本当です! カエルがいます!」
「家の中にいるなんて、ペットか?」
バンジョーがあっけらかんとだれにともなく尋ねるが、これには玄内がニヤリとして答える。
「んなわけあるか。このガマガエルは晴和王国の種なんだ。つまり……」
「ああ……僕、忍者が口寄せで動物を使役するって聞いたことがあったなァ」
さっそくミナトがピンときて言った。
「つまり、フウサイさんですか!?」
驚いたクコに、バンジョーがガマガエルを見て大きな口を開けた。
「うおおお! マジだぜ! こいつ、フウサイのカエルじゃねえか! おまえ旅についてきてたんだな!」
「バンジョーさん、この子を知っているんですか?」
クコが聞くと、バンジョーはニカッと笑った。
「おう。オレがあいつのいた
バンジョーは、フウサイとは幼馴染みだった。バンジョーが幼い頃、今から十年ほど前になるが、短い期間フウサイと里で過ごした。だからバンジョーは忍者のような身のこなしもできるし、忍者についても多少知っているのだが、フウサイの兄貴分の忍者に料理を教わっていたから、忍術を覚える気もなく、忍術は使えない。
「俺も見たことなかった。それに、知らなかった。フウサイはカエルを使役できたんだな」
カエルを見つめるサツキの元に、カエルが近づいてきた。ぴょんと跳ねてテーブルに乗り、口を開けて舌を伸ばした。サツキに細く丸められた紙が差し出される。
「これは……」
「フウサイさんからの情報だね。サツキ、見てみよう」
ミナトに促され、サツキはカエルの舌から紙を受け取る。紙を開いて伸ばしていくと、文字が書かれていた。
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