49 『ホープフルフレンズ』
レオーネはミナトに爽やかな微笑みを投げかける。
「やあ。ミナトくん」
「お疲れ様です。ミナトさんには物足りない試合でしたね」
ロメオにそう言われて、本当のことだけにミナトは苦笑してしまう。
「いやあ、半年くらい前に、王都でも寝坊助みたいな方と戦いましたが、こちらは本当に眠ってしまったので驚いております」
「ははっ。ミナトくんが本気でやろうとすれば、張り合いのある相手なんてそうそうコロッセオにもいないかもしれないが、いろんな魔法を見るのは勉強になると思うよ」
「ワタシたちの試合もぜひ観ていってください」
「もちろんです」
「またね」
「では」
ミナトはレオーネとロメオを見送ると、一階の観客席へと移動した。
舞台では、『司会者』クロノがレオーネとロメオに声をかける。
「今、ミナト選手となにかお話しされていましたよね。もしかして、お知り合いですか?」
「ええ。友人です。今、オレたちの城に招いている客人でもあります。サツキくんもね」
レオーネが答えると、クロノはうれしそうに叫んだ。
「これはすごーい! あの驚くべき強さを見せてくれたミナト選手、そして先の試合のルーキー・サツキ選手は、レオーネさんとロメオさんのご友人ということです! どおりで二人共、強いわけです! 納得です!」
一人で興奮しているクロノは、
――やはりワタシの見る目は正しかった! 彼らに特別なものを感じたのは、間違ってなかったんだ。
と浮かれていたが、会場の人々も、レオーネとロメオの知り合いと聞いて喜んでいるようだった。
ただそれだけのことに盛り上がる会場を見て、レオーネとロメオは苦笑し合っていた。
一階の観客席から様子を見ていたサツキは、まさかバトルマスターがあの二人だとは思っていなかったので、面食らっていた。
――レオーネさんとロメオさんがバトルマスターだったなんて。
考えてみれば、レオーネとロメオがこのコロッセオに興味があるかどうかでしかない話だったかもしれない。あの二人以上に強い人など、そうそういないだろう。無敵の最強王者がレオーネとロメオだと知り、納得感もすごかった。
――ミナトの試合が見応えなかったけど、このあとおもしろい試合が観られそうでよかった。
早くも、サツキは期待に胸を躍らせる。
すると、ミナトがやってきた。
「サツキ」
「ミナト。お疲れ様。はい」
「ありがとう」
今度はサツキが《
「ふわあ、やっぱりヨウカンはおいしいなあ。バンジョーさんのヨウカンは特に絶品だねえ」
「さっきの試合、ミナトは魔力なんて使わなかったんじゃないか?」
「うん。まあね。とはいえ、甘い物は別腹っていうしさ」
「それは意味が違う」
幸せそうにヨウカンを頬張るミナトを一瞥し、サツキは言った。
「でも、驚いたな。レオーネさんとロメオさんがバトルマスターだったなんて」
「だねえ。ダブルバトル部門があの二人のバディとして、二人のうちの片方がシングルバトル部門のバトルマスターなんだよね? どっちがそうなんだろう」
「それは、ロメオさんだよ」
横から声がかかった。
二人がそちらへ顔を向けると、立っていたのは先程サツキと対戦したシンジだった。魔法《
「それよりも、ボクが驚いたのはキミたちさ。二人共、あのレオーネさんとロメオさんと知り合いなんだって?」
親しげにサツキの隣に腰を下ろす。
「はい。あの、身体は大丈夫ですか?」
サツキが問いかけると、シンジは照れたように笑った。
「それは言わないでくれよ。身体は大丈夫さ。今はなんともないよ。しばらく気を失っていたみたいだけど、ここの医療班は優秀なんだ。ちゃんとした医療魔法を使える医療班ができる前は、年間で数千人が亡くなっていたらしいけど、現在では十人もいないと聞く」
「へえ」
「て、そんなことはいいんだ。サツキくん、レオーネさんとロメオさんとは、どんな関係なんだい? 友人って話だよね?」
「ええと、同盟関係というか、協力関係みたいなものです」
「ん? それって、どういうことだ?」
ピンとこないで腕組みするシンジに、ミナトが言った。
「僕らは士衛組って組織で、サツキが局長。僕が壱番隊隊長で、ヴァレンさんが僕の壱番隊に入ったんです。レオーネさんとロメオさんは士衛組には入ってないけど、協力関係を結んでくれたって感じかなァ」
「えぇー!? ヴァレンさんって、レオーネさんとロメオさんのいる『
自分なりに情報を統合して納得するシンジ。
ヴァレンが士衛組に入って一日しか経ってないというのに、この噂の広がり方は相当なものらしい。それだけ、ヴァレンという人間に注目する人が多いとも言えるだろうか。
――ヴァレンさんが士衛組に加入してくれたことは、人気取りという意味だけでもかなりの効果を持つのか……。もしかしたら、俺たちは、思っていた以上に強力なカードを手に入れたのかもしれない……。
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