21 『ネクサスストーリー』
「さて。物語りを続けよう」
『
現在、トウリはアキとエミからの手紙をテーブルに置き、二人に話をしていた。ミホの姉と妹は手紙と見比べて二人でしゃべっている。
トウリは言葉を紡ぐ。
「以前、姫には言ったかな。人の数だけ物語があるように、それぞれが我々のうかがい知れない物語の中にいる。彼らが我々を知らないように」
「そうでした。姫は、そのとき馬車の中にいました。夜の王都です」
「よく覚えていたね」
「はい。浴衣の女の子がいたんです。あっ!」
なにかに気づき、ウメノは手紙に同封されていた写真を見る。
「この子です! 姫は、この子とお友だちになりたいと言いました」
背の小さな少女は、ポニーテールで表情に乏しい感じもあるが、柔らかく微笑んでいる。
「うん。そうだったね。姫には姫の物語があり、リラさんにも自分の物語があり、その子にはその子の物語があり、ミナトくんにも彼の物語があった。この手紙と写真をくれたアキさんとエミさんにもね。だが、物語がいくつあろうと、登場する人物の数に決まりなんてない」
はい、とミホはうなずく。
「わたしもいろんな人に出会ってきました」
「ミホくんの物語が、彼らと交錯することもあるだろう。すでに、リラさんの物語とは交錯していたしね。……ただ、実はほとんどの物語は、どこかでなにかの因果によってつながっていたりするものでね。ここにいる我々が、遠くにいる彼らの物語に関わることもあると思うんだ」
「そして、知らないだれかと知らないだれかがまた出会うんですね!」
と、ウメノはうれしそうに言った。
「なんだか、そう考えると楽しいですね」
ミホもトウリを見上げる。
トウリは優しく微笑む。
「うん」
「リホもリラちゃんに出会いたいな。ちゃんと、リラちゃんの物語の中で」
三女『
「うちら測量艦が関わるのはまだよ」
「サホ姉、浪漫がない」
リホににらまれるが、サホは平然と返す。
「まだってだけ。視察は決まってる。アルブレア王国の視察が。オウシ様たちと入れ替わりに、トウリ様と共に行く。その道中、関わることになるわ。だって、そのリラちゃんはアルブレア王国の王女なんだから」
「えー! そうなの?」
びっくり顔のリホに、ウメノが教えてくれる。
「そうですよ! 姫もこの前トウリさまに聞きました」
「あのオウシ様が、うちらにアルブレア王国を視察させるからには、なにかがある。もう起こっていることか、これから起こることか。そこに、なぜか城を抜け出て旅をしている王女様が関わらないはずない」
トウリは、サホの相変わらずの読みのよさを頼もしく思いながらうなずいた。
「そうだね。兄者はなにかを予感してる。アルブレア王国とつながるために、港町の
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