41 『天守閣と鳥瞰図』
ピラミッド内では、それぞれの場所で、戦いが始まっていた。
シャハルバードとクリフが一人ずつを相手にして、アリとナディラザードが二人で一人を相手取り撹乱する。
ルカとナズナとリラは天守閣にのぼっていた。
ルカは最初に《
ナズナは天守閣のリラの元へ戻り、フウサイはサーミフと、クコはプリシラとの戦いが開始される。
スティスは役目を終え、一番後ろでみんなを見守っている。
そして。
サツキは開かれた道を進んで、マルコとの距離を詰める。
マルコとの距離が五メートルほどになったところで足を止めた。
「では、我々も決闘を始めましょう」
「決闘。いい言葉だ。だれにも邪魔されずに戦おうじゃないか、『
サツキは剣を舞わせる。
マルコも剣を抜き放ち、サツキに応じた。
剣劇を繰り広げるサツキだが、容易に崩せる相手ではない。
――マルコ騎士団長……かなりの手練れだ。さすがは騎士団長、強い。この地の軍事を任されるだけの実力者……。
だが、サツキにはわからないこともある。
――彼はどんな魔法を使うのだ。『ランプの主人』とは、彼の魔法に関係しているとみているが……。
魔法の種類によっては、この接近戦も、ただ近くにいるだけで命取りになりかねない。だがそんなことを言っていたら剣など使えない。大事なのは、相手の出方を常にうかがいつつ、素早く対応すること。
一方マルコも、自分の一太刀目を流されて、にやりと口の端をひきつらせる。
――思ったよりやるじゃないか。このバラガキ……!
しかし、とマルコは気を引き締める。
――十日ほど前にケイトが寄越した情報では、このワタシより一枚か二枚は下のはず。成長の早いやつとは聞いていたが、この短期間にまた成長しているのか。
成長速度に感心はするが、
――しかしまあ、ワタシも久々に魔法を使うほどの敵と戦えそうで、楽しみではあるぞ。
マルコがいつ魔法を使おうかと機を見る中、サツキは着実に《
――もう少し圧縮したい。そうすれば……。
この戦場で、もっとも戦闘力の差があったのは、シャハルバードと相手の騎士だった。シャハルバードは余裕を持って相手の剣を捌いている。
楽々といなして、シャハルバードはクリフに言った。
「そっちは大丈夫かい?」
「はい」
「ワタシは一足先に片づけて、ナディラザードとアリのフォローに回る」
「わかりました」
「こちらは任せてくれていい」
クリフも元
そして、次に余裕があるのがルカである。
「そろそろね」
ルカの刀剣は、たったの三本しか出現させていない。刀が一本、剣が一本、槍が一本。それらがルカのコントロールによって宙を飛び回って斬りつける。このときのルカの操作は、指の動きを都度都度変えるものである。本来は思念だけで操っていたが、まだ三本の細かな操作が苦手なため、なんとなくで指先が動いてしまう。
玄内には、
「指の動きで三つの武器がどう動かされるか、相手に予測されないためにも、思念だけでコントロールできるようにするのが目標だな」
と言われている。
――今もつい指先が動いてしまっているけど、戦闘中でもかなりコントロールできるようになってきた。いい練習になるわ。
ルカは戦いつつも、ほかのみなの戦闘にも気を配った。
――今のところ、各地問題ない。士衛組総長として、サツキの頭脳として、視野を広げるためにも周囲の把握を怠らない。のちの戦で、生かされるかもしれないから。
現状、ルカにとってサツキの役に立つにはなにをすればいいのか、それほど明確ではない。ただその場でサポートをするくらいしか思いつかない。組織の参謀役をする先輩などがいれば話も聞けたりするのだろうが、そんな人は知らない。
だから、今は思いつく中で自分に足りない視野の広さを鍛えようと思っていた。
――相手も弱くはない。しかし、先生に学び、サツキやクコに相手をしてもらうより遥かに楽な戦い。ラッキーではなく、私の計算で確実に詰ませる。その戦略を考えながら、みんなの様子も見る。
都合のよいことに、ルカは天守閣にのぼっている。
この舞台を一望できた。
鳥瞰図を見ながら戦うようなもので、みんなの様子は手に取るようにわかる。
かつ、現在の対戦相手は、三本の武器だけで相手取れる程度の実力。ほかの仲間の戦いを邪魔させずに足を地面に釘付けさせることも容易だった。
――面倒なのは、クコかしら。
クコは、プリシラとお見合いを続けていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます