7 『参番隊と役職』

 説明は、サツキが要点を並べるように述べて、ただの三分ほどで終わった。

 まず、士衛組はリラを含めた十二人が現在のメンバーである。ここにいない四人は別行動をしている。

 士衛組には、役職がある。

 トップが局長、その下に副長と総長が並ぶ。士衛組では副長と総長は同格だが、総長は局長の秘書であり指揮権を持たない参謀役である。

 副長の下には、三つの隊がある。

 壱番隊、弐番隊、参番隊がそれである。各隊には隊長を置き、副長は局長の指令を各隊の隊長に伝達する役目がある。

 壱番隊隊長はミナト、壱番隊隊士はケイト。

 現在別行動をしているチナミを除いた三人が弐番隊であり、リラの知る医者『万能の天才』たる玄内が隊長を務めている。

 そして、リラには参番隊の隊長を務めてもらう。


「わ、わたくしが隊長ですか?」


 驚嘆して、しかし上品に口を押さえるようにするリラ。


「うむ。隊長はクコとの連携が必要になるし、参番隊隊士の資質をみるとリラが適任だと思った」

「恐れ入ります。あの、わたくしのほかに参番隊のメンバーはどなたになるのですか?」

「ナズナとチナミだ。チナミは、今は弐番隊の三人と共に我々と別行動をしている」

「そうですか。ナズナちゃんと同じ隊でうれしい」


 とリラはナズナに笑顔を向ける。ナズナも笑顔を返して、


「わたしも。リラちゃん、いっしょにがんばろうね」

「うん」


 いとこ同士のこの二人のコンビネーションは問題なかろう。ナズナとチナミも幼馴染み同士良いコンビだったし、あとはリラの指揮能力とチナミとの相性次第になる。

 それから、サツキはフウサイが監察という役にあり、密偵と周辺調査、局長の護衛が主な仕事だと伝えた。局長直属なのが、副長・クコ、総長・ルカ、監察・フウサイということになる。

 各隊についてもわかったところで、サツキは一応リラに確認をとる。


「リラ」

「はい」

「参番隊隊長、頼めるか?」

「もちろんです。わたくしのために、いいえ、アルブレア王国のために、みなさんが頑張ってくれているのです。わたくしが頑張らないわけにはまいりません」

「そうだな。でも、無理は禁物だぞ」

「ありがとうございます、サツキ様」


 これにて、リラへの説明は終わった。

 今度はクコがリラに雑談でもするように言った。


「それにしても、リラはよくひとりでここまで来られましたね」


 まだこんなに小さいのに、と思う。クコからみたら、リラは今も幼い頃の妹の印象そのままなのである。

 リラはにこりと笑って、思い出したように胸の前でぽんと手を合わせた。


「そうでしたね。言うのを忘れてました。実は、ここまで来るのに、ごいっしょしてくださった方たちがいるのです。サツキ様には名推理で気づかれてしまったのですが」


 名推理はやめてくれ、とサツキは小さくつっこむ。

 クコは目を丸くした。


「いっしょに旅をしてくださった方々ですか」

「はい」


 ナズナがおずおずと尋ねる。


「どんな人たちなの……?」

「とてもやさしい人たちだよ」


 とナズナに答えて、リラはみんなに説明するように敬語に戻って話した。


「ガンダス共和国出身の方たちです。ガンダス共和国で出会いました。旅をしている商人だそうで、四人います。リーダーの男性がシャハルバードさん、アリさんとクリフさんも男性で、ナディラザードさんは女性です。わたくしは二日ほど前にこのファラナベルの街にやってきて、以降はシャハルバードさんたちと同じ宿に泊まっています。ナディラザードさんとは同部屋です」


 ガンダス人はせいの人間に親しみを感じる人が多く、晴和の香りのするリラにはそれで親しくなったところもあるのだろう。リラには放っておけない空気もあるし、あるいはそのおかげかもしれなかった。


「あのシャハルバードさんでしたか! ナディラザードさんという方は知りませんが、全然気づきませんでした」

「そうね。じゃあ、バミアドでも会えたかもしれなかったのね」


 クコとルカは驚き、ナズナはガンダス共和国ラナージャを思い出す。


「じゃあ、ラナージャでも……」


 そのつぶやきはリラには聞こえなかったが、リラはナズナの背中の翼を見て、急にぽんと手を打った。


「ダーフィラーンさんが見たのは、ナズナちゃんだったんだわ! 今気づいた」

「わたし?」


 ナズナは小首をかしげるが、リラは微笑んで、


「ソクラナ共和国のバミアドで、リラを助けてくれた人。『せんいちかた』ダーフィラーンさん。あとでいろいろ説明するときに話すことになると思う」

「そっか」


 ここで、ルカはサツキに提案した。


「彼らとは会うべきね。サツキ、お礼もかねて挨拶に行きましょう」

「そうだな」

「商人は情報に通じているわ。場合によっては、彼らと一時的に行動を共にすることも、検討する余地があると思う」

「まあ、それは彼ら次第だろう。まずは会いたい。リラ、案内を頼めるか」

「はい。さっそくまいりましょう」


 八人はシャハルバードたちも宿泊しているという宿に向かった。

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