15 『動き出す螺旋』
トウリとウメノとチカマルは、ババ抜きを始めた。
始まったばかりだが、トウリにはババがだれの手にあるのかがわかる。表情に出やすいウメノだろう。
最初に引くのはトウリである。
相手はウメノ。
「……」
真剣そのもののウメノの目を見て、やはりやめる。
――まあ、適当に。
いちいち表情を見ては丸わかりである。
あえて適当に引くことにした。
トウリが一枚を引くと、自分の引いたカードを見る前に、ウメノのうれしそうなニヤニヤ顔が目に入った。
――さっそく動いたか。
次にトウリの手札を引くチカマルは、視線を横に切ってウメノの表情からいろいろと読み取ったらしいとわかる。
「僕も、あえて考えず……」
と、チカマルはトウリの手札と表情を確認せずに手を伸ばす。
王都と呼ばれる世界最大の都に、『
オウシは国主であり、トウリとは双子の兄弟。スモモはその二人の妹で、ミツキはオウシの参謀役である。
スモモが馬車を停めた。
「はい。目的地周辺」
妹のスモモはどこにでも運んでくれるが、本人も王都に来るのを楽しみにしていた。政治に関わるつもりもないため、オウシが参謀ミツキを連れて仕事をしてくる間、遊ぼうというわけである。
オウシは景色を見て言う。
「どこじゃ」
「私が案内しますので大将は気にしなくて大丈夫です」
「大将じゃなくて隊長じゃ」
「行きましょう、隊長。お嬢、ありがとうございます。また帰りもお願いしますね」
「はいはい。いってらっしゃい」
ミツキのあとに続いてオウシも馬車を降りる。
二人が王都の街に消えて、スモモは伸びをした。
「せっかく王都に来たのにちょっと雨が降りそうだなあ。でも、久しぶりに来たんだもん。遊ばないともったいないよね」
巾着を取り出す。《
紙コップの底には垂れた糸がついている。これは魔法道具というより、相手の魔法によって使用できる代物だった。
「《
離れた場所にいても通話できる糸電話のようなもので、ペアとなる紙コップは魔法によってつながっている。この魔法の術者にしてスモモの友人に、さっそく呼びかけた。
「もしもし? ミオリ? やっと王都に着いたよ。どこ行けばいい?」
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