二章 約束編
第34話 プロローグ2
平日の朝は憂鬱だ。クソと言ってもいい。
毎朝、何度も味わう気怠さに嫌気が差して愚痴を吐露してしまうほどに憎たらしい。誰もがこの気持ちを共感してしまうだろう。逆に今日も良い日と言い、元気一杯に、いってきますの挨拶をして家を出る者を敬礼と称賛の声を授与してもいい。
そんな朝。とあるマンションの一室。ここにも朝を嫌う者はいる。けど、忌み嫌う平日だというのに普段より早く起きてしまい、毎朝のように通って来てくれる妹の手料理を待ち、ソファに座ってテレビを見ながらお茶を啜る天瀬佑真の姿があった。
寝癖のついた黒髪。黒い瞳と、存在感がほぼないと言っていい眼鏡。整った顔立ちでありながら目つきは悪く、目元に薄っすらと隈が浮かんでいる。傍から見たらガラの悪い不良と差して変わらない。傍から見たら関わり合いたくない人種である。
雰囲気からして近づきたくはないだろう。
そんな佑真はふあ、と欠伸をしながら退屈そうにテレビを見ている。
浮気がどうの、誰が死んだだの、天気予報の今日は雨になるかもだの、朝から憂鬱になるような話ばかりである。まだキャベツを食べるウニが美味いという話のほうがマシだ。
そんなニュースを佑真は川の流れを見るかのようにしてお茶を啜った。
「お兄ちゃん。もう少しでできるからねー」
妹の
制服の上にエプロン姿。うん、じつに可愛い。
「おー」
佑真はそう返事して、テレビに視線を戻す。
『今日ご紹介するのはシリーズ累計部数五百万部突破の大人気ライトノベル『ヤニくら』。累計発行部数五百万の人気作が実写化決定!』
突然流れたライトノベルの実写化決定のニュース。
「……、……………………………………………………」
朝のニュースで、テーブルでパン齧ってるサラリーマンからしたら『あ、実写化するんだ。へぇ~』で終わるだろう。
しかし、そのラノベの続巻を今か今かと楽しみにしていた佑真はそのニュースを見て時が止まったかのように硬直していた。啜りかけていたお茶を口から零しながら。
「アアアアァァァァァァァァ!」
気づけば絶叫とともに持っていたリモコンを投げてテレビをぶっ壊していた。
「お兄ちゃん!?」
朝から波乱であった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます