第15話 子狐3

愛優(あゆ)は子狐を見ている

「八夜狐(やよきつね)さん、今日はなんですか?」

子供に憑依した後に、

すぐに支配下に置かれた彼女が少し哀れに思う。


「おぬしは何か失敬な事を、考えておらんだろうな?」

なかなか鋭い


「今日は見物のために体を借りておるのじゃ」

なるほど百年以上前から封印されていたので散歩をしたいらしい

「愛優ちゃんは、無事ですか?」

心配になる。


「この娘の方が力が強い、下手すると、わしが消される」

不機嫌に答える

「では、せめて普通に話をしてもらえませんか?」

幼い娘の言葉で話をしてほしい


「わかった、これでいいかなぁ?まじ卍」

ちょっと寒気がするが、あきらめた

愛優ちゃんについて歩きながら、憑依している八夜狐の質問に答える

「ほう戦争で街が焼けたのか、道理で見慣れぬ家が多い」


すると病院の前で愛優(八夜狐)が立ち止まる

上層の病室を凝視する

「どうかしましたか?」

「犬神がおるぞ、かなり力があるな」


「あれ?愛優ちゃん、どうしたのこんな所で?」

舞子と友達の二人が、こちらを見ている

「八夜狐さん、彼女は舞子さんといって、お姉さんのお友達です

 話をあわせて」

わたしの声は彼女たちには聞こえない筈だ


「ん、そうだな、うむちょっと散歩をしている」

ぎこちない、なにか偉そうだし


「私たちはお見舞いなの、玲子によろしくね」

舞子達は病院へ向かおうとすると

「わらわ、ではなく私もお見舞いしたい」

両手を口元に当てて、お願いポーズをしている

なんか痛いな八夜狐


「えーどうしよう、病院なので騒がないでね」

一緒に行くことになる。

「八夜狐さん、何する気ですか」

心配になって聞いてみた

「犬神も珍しいからな挨拶じゃ」


病室に入ると、未成年の若者が寝ていた

その腹の上に巨大な赤ん坊と、頭に犬神が憑依している

あまりの霊圧の高さに、私ですら中に入れない。

「なんですかここは」

「犬神が寝ておるな起こすか」

いきなり挑発的な事を言い出す


「上村君、起きてるかな」舞子がもう一人の女学生に聞いている

「ずっと昏睡しているの」

彼女は、悲痛そうに彼を見ている


「この男子と話をしてもいいか?」

愛優(八夜狐)が舞子に聞いている

止めようにも病室の中に入れない。

「たぶん寝ているので無理よ、愛優ちゃん」


こくんと、うなずくと犬神に向かう。

『起きておるのか』

人には聞こえない

『狐かお前に用はない』

薄目を開けて愛優みると興味無さそうに眼をつむる。


『どのくらい生きておる』

『うるさい、お前の宿主ごと食らうぞ』

むっくりと起き上がると牙をむけた。


「わんちゃんなの?」

愛優が手を伸ばすと、犬神がフセの状態になる

そのまま犬神に触ると、姿が消えた。

「あかちゃんはまた生まれてね、ばいばい」

愛優を見て、にっこりした赤ん坊も消える。


「舞子さん、こんにちわ、今日は帰ります」

手をふりながら病室から出てきた。

「なにしたんです、愛優ちゃん」


あっけにとられた舞子さん達を残して病院を出た。

「んー、わんちゃんとキツネさんが喧嘩しているみたい」

あとで玲子さんに、報告しなくては。

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