第14話 子狐2
「お前はどこの眷属じゃ」
子狐は愛優(あゆ)を見ながら悩んでいた。
「やはり玲子さんに、相談するかな」
目のすわった愛優が、子狐を睨む。
下校をしていると、塀の上に子狐がいた。
周囲に誰も居ない事を確認してから
「愛優がどうかしたの?」
と聞いてみると
「今回は憑依した物の、位(くらい)が高くて」
と子狐が答えた。
どうやら強い霊が愛優に取り憑いているらしい。
「愛優は、どこなの」
子狐の案内で、公園まで行くと藤棚のあるベンチに
座っている。
「ぬしがこの娘の母親か?」
愛優の声はしゃがれて年老いた女のようだ。
そこまで老けて見えるのか、ちょっとムッとしたが
「私は姉です、愛優はまだ幼い、憑依はやめていただけませんか」
なるべく丁寧に頼んでみる
見ている限りは邪悪さは無いように見えた
私の話を聞くと、半透明の女の姿が愛優から分離する。
私より若く見える美しい女性だ。
髪は長く腰まである。肌も張りがあり艶がある。
瞳は青く澄み渡り、吸い込まれそうになる。
「地震が多いせいか、封印された石が壊れて漂っていた所じゃ」
ニュースに出ていた古い石碑の事だろうか。
「たまたま、その童女を見つけてな、取り憑いたのじゃが
まさか眷属が見張っているとは、思わなんだ」
子狐がある程度は牽制していたらしい。
「わしの名は、八夜狐(やよきつね)と申す」
「愛優をどうしたいの?」
自分の力では祓えない、神社まで連れて行けるかギリギリに感じる。
八夜狐の方は、封印されていた割には暢気に
周囲を見ている
「100年位は封印されていたのか?周りは石の家ばかりじゃな」
私を見ると
「おまえの妹は居心地がよい、わしが取り憑いても余裕じゃな」
子狐を呼び寄せて、聞いてみる
「どう?神社まで連れて行ける?」
子狐は「美成(みなり)さんも祓えるか微妙ですよ」
ここまで人格がある神獣だと、真言や塩程度では無理だ
私はもう一度頼んでみる
「お願い、愛優は子供で学校にも行かなければいけない
何か別の依り代(よりしろ)では、ダメなの?」
八夜狐は
「この娘の神格はかなり強い、わしがそれを食らいながら
また、この世界で暴れる予定じゃ」
にやりと笑うと、愛優とまた重なる。
「邪魔立てするなら、姉でも許さんぞ」
愛優の目がきりきりとつり上がる。ベンチから立ち上がると
身構えた。
「愛優!」
唐突に鋭い声が突き刺さる、その声に驚いて体が跳ね上がる。
心臓に悪い。
「あれ?ママどうしたの?」
愛優は、びっくりしたような顔できょろきょろしている。
子狐は、驚いた声で
「玲子さん、八夜狐はまだ同化したままですよ」
私は母親に近づくと
「母さん、どうしてここに?」
「もう夕飯よ、戻りなさい」
いつもの抑揚の無い硬い声で命令をする。
愛優は家にも戻っても何も変化の無いまま、
翌日に神社へ連れて行く。
神社に住む巫女の美成は、愛優を丁寧に調べる。
「どうも八夜狐を眷属にして従えているわね」
「どんな状態なの?」
「愛優ちゃんは、憑依というより眷属を自在に扱える使役者ね
有名な人だと、安倍晴明かしら?」
妹がそんな有名な人と同レベルかと思うと声が出ない。
「この子は憑依されても、霊障で悪い影響は
出てないでしょ?神格が強く大きいので、影響を与えられない
感じね」
私は
「これからどうしたら」とつぶやくと
「何もしなくていいわ、まだ幼いからこの程度だけど
年齢が上がれば自覚して、周囲の霊獣を従えるようになる
私の神社に就職してもらいましょう」
楽しそうに笑う美成は、手駒が増えて嬉しいのだろう。
「母さんになんて言おう・・」
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