あの日と今の僕らを繋ぐ物語

あの日と今の僕らを繋ぐ物語

懐かしき僕らの青春とも言える、現代社会の裏に蠢く魔術と陰謀に立ち向かう少年少女を描いたゲーム。
今を時めく新たな王道とも言える、転生或いは転移によって新たに得た力と居場所で大活躍する内容のWeb小説。
本作はそんな、あの日の物語を今のフォーマットで再構築……するに留まらず、不穏な一捻りを加えた物語である。

現実世界で早逝した一人の男がゲームの世界に転生し、大団円無き本来のストーリーを変えて理想的な新たな結末を導こうとする。
――それがこの物語の筋である。
視点となるのは本来のシナリオではあっさりと退場する脇役、というのは如何にも現代のWeb小説、といった捻り方だ。

しかし、読者は最初に物語から不穏な警告を受け取る。
この物語には裏があり、そう素直に受け取ってはいけない。視点人物は所謂「信頼出来ない語り手」である、と。
謂わば「叙述トリック宣言」であるが、この不可解な引っ掛かりが続きを読み進めさせる。

そして終盤で明かされるその真意は、ある種の示唆に富んだメタ視点からのアンチテーゼであり、
「転生者の善と悪を分かつものは何か」という一つの答えを提示してくる。
この辺りは往年のゲームでしばしばプレイヤーを阿鼻叫喚に叩き墜としてきた流儀の血脈を感じさせる。

総じてあの日と今のスタンダード、そして捻りが巧みに融合し、結末も綺麗にまとまっている
(個人的な考察として作劇上こうならざるを得ず、この帰結を確り書いたのは英断だと思う)。

また、豊かな語彙が適切に使用された美しい文体も見事であり、完読の一助となるだろう。
是非結末まで読んでもらいたい、と思える一作。オススメ!