終 章『彼の名は……』

確定条件⑤



 以下の言葉は絶対である。

 以下の言葉は真実である。

 以下の言葉は摂理である。


 物語ストーリーの枝分かれに重きを置いた創作物フィクションは、分岐ルート複数の結末マルチエンドという可能性によって、闖入者による改変も大目に見てくれる懐の深さがあった。


 具体的に言えば――辿


 それが神を名乗る不審な存在が介入しても、責任――もとい矛盾の処理は、製作者スタッフの手に委ねられる。


 そう……


 神がもてあそんだ『Re:turnerリターナー -fantasiaファンタジア gardenガーデン-』の世界は、予定どおり没ルートとして剪定された――だが、話はここで終わらない。


 物語ゲームが終わっても、世界リアルは終わらない。


 神は遊戯を前にしなければサイコロを振らないが、人は日々、思わずサイコロを振りたくなるような悩ましい選択を余儀なくされ続けている。

 それでも、往々にして人はサイコロを振らない。見えざる手に翻弄されながらも歩み続けた加地かじ月彦つきひこのように、悩んで悩んで悩み抜いて、選択を下す。

 そしてそれは、矛盾の処理を委ねられた製作者スタッフも同じこと。


 捨てる神あれば拾う神あり。

 否、拾う人あり。


 以上の言葉は絶対である。

 以上の言葉は真実である。

 以上の言葉は摂理である。


 端的に言えば――ささやかな奇跡が微笑んだのだ。


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