斜陽①
――『
最初は俗に言う『共通ルート』の形から始まり、天秤のごとき選択肢によって物語は二つの異なる側面を見せるようになる。
最初は主人公の
先の自殺騒動にも似た、猟奇殺人事件の発生――恣意的な異世界災害の食べ残しが公に露見したことによる非日常が、良太郎を勇者へと呼び戻す。
そして猟奇殺人事件の犯人である『魔王の蟲』――かつては魔王の懐刀であった忠臣との戦い。
ブランクに苦しめられながら、因縁の敵に辛くも勝利を収めた良太郎を目撃していた
だがここで重要なのは、月彦に関してではない――良太郎が魔王の蟲を消滅させたか否か、だ。
選択肢によって魔王の蟲は生き延び、良太郎のあずかり知らぬところで
――そう、ここで『
厄介なことに、良太郎当人の視点からでは、魔王の蟲が再登場するまで生死の判別がつかない。気づくのは、最悪の事態が目前に迫り来てからだ。
良太郎に直接訊いても詮なきこと。だとしても手回しの痕跡は確実にあるものだと踏んで、月彦は地道な情報収集を重ねてきた。朔之介の動きに注視し、
しかし、それでも気は抜けない。なにせ月彦が転生者である記憶が目覚めた結果、知識にある筋書きとはかけ離れた道を歩んで久しいのだ。
だからこそ、朔之介の真実を告白し、暁奈も覚悟を決めたタイミングを見計らって、良太郎に「朔之介が存在を認知しており、異世界化を強行している現状を思えば、(生きていればの話だが)接触して危険度が増すかもしれない」と話した。最早形骸化した「記憶が戻って」との文言も添えて。
そして良太郎の返答は――。
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