2年目 懐いてきた猫かわいい

 二年目。猫は少し大きくなった。毎日一緒にいるとあまり実感が湧いてなかったが、ふと思い立って、お気に入りのクッションに寝ている家に来たばかりの時の写真と、今の写真を比べたら明らかに隙間が小さくなっている。それで気づいたのだ。


 それに伴い、家に来たばかりの頃に比べて、行動範囲も広くなった。テーブルの上に飛び乗って、人間が置いたものを前足で落としてみたり、背の高いタンスや戸棚に飛び乗って、人間の手が届かないその上で悠々自適に寝てみたり、とにかく人間を翻弄してくる。


 他にもご飯もツナ缶のようなウェットフードから、かりかりへと変化した。まだ育ち切らない小さな牙でバリバリと餌を齧る音は思わず聞き入ってしまうほどだったが、牙が折れないか少し心配だ。


 そして大きな変化がもう一つ。子猫の頃は、丸まって毛玉のように一匹で離れて寝ていることが多かったが、家に来て二年目の夏にしてお腹を見せて寝るようになったのだ。


 初めて油断しきって、お腹を天井に晒して寝ている姿を見た時は、思わず写真を撮ってしまう。見かけたら毎回撮るものだから、写真フォルダは同じような写真で埋め尽くされた。なんなら一番のお気に入り画像は、現在の待ち受け画像だ。


 それに、僕の隣で寝てくれるようにもなった。膝の上で寝てくれないかと、抱っこして乗せてみるチャレンジはことごとく失敗していたが、こちらが手を出さずに放っておくと、のそのそと横にやってきて、丸まって寝始めるのだ。


 ずっと人間から距離をとって隠れていた時期に比べて、格段に懐いてくれているのかと思うと嬉しい。隣で猫が寝るたびに、これまた写真を撮って幸福を噛み締める。またフォルダ内の猫率が上がった。


 でも変わらないことも沢山ある。相変わらず猫じゃらしを模したおもちゃで遊ぶのが好きなことだ。遊びたい時は、僕の前にちょこんと座り、じっと見つめてくる。そのタイミングで棚にしまってあるおもちゃを取り出し、猫の気がすむまで人間が遊んでもらうのだ。これは気まぐれなお猫様と触れ合える貴重な時間だ。


 まだまだ爪も牙も発達段階で、噛まれても引っ掻かれても全然痛くなかった。傷すらつかない時もある。むしろたくさん遊んでいる中で、僕の方の猫の攻撃を避けるスキルが上がってきたこともある。


 この頃も猫が居なくなったり、死んでしまったりしたら、何日も泣き腫らして気絶するように眠り、起きたらまた泣き腫らして眠り、生活なんてできないだろうと思っていた。

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