4-5

僕ら三人は、じっと局面を見守っていた。

栗田さんは王手をかけ続けるが、どう見ても詰まない。大勢は決していた。

対局時計の電子音が響く中、栗田さんは背筋を伸ばして頭を下げた。

終わった。チームの負けも決定した。

チームネタ将、準決勝にて終戦であった。



「大熱戦でしたけど……はい」

 対局後のチームインタビュー。中五条さんは少し感極まっているようだった。どんな気持ちで対局を見ていたのだろうか。

「これはもう、監督の采配ミスです」

「私がもっと勝っていればよかったね……」

「いえ、私の実力不足です」

「やっぱり加島君のせいね」

「えっ」

 皆自責の念を述べていたのに、福田さんだけは僕が悪いと言い出した。なんてこったい。

「まあ、そうですね。そもそもネタ将に引きずり込んだのも加島君ですしね」

 司会までそんなこと言いだした!

「帰責問題は決着したようですね」

「き、キセキ……?」

 棚橋さんまで納得して頷いている。

「敗北の責任は加島君にあるってこと」

「いやいや、えー、そうなの?」

「まあ、チームネタ将の戦いはまだ終わってないわ。最後まで皆さんに楽しんでもらうことが大事だから。というわけで、反省動画をお楽しみに」

「反省動画?」

「今考えた」

 そんなわけで、チームネタ将の戦いはまだ終わらなかったのである。



 結局、チーム天の川は決勝戦でも勝利して優勝した。もう、今回の企画において完勝したと言っていいだろう。

 そしてチームネタ将の四人は橋の上にいた。

「いやいや、これは二番煎じじゃない?」

「あえて既存のネタに挑戦する。それもまたネタの進化には必要よ」

 そう、ここはバンジージャンプの名所なのである。

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