4-4
ついに、9戦目になった。
ここまでは棚橋〇福田×栗田〇福田〇棚橋×栗田×福田〇棚橋×の4勝4敗。最後の一戦は栗田さんに託された。相手は野口女流初段。若手有望株で、鋭い攻めに定評がある。
新旧攻め将棋対決は、序盤からものすごいことになっている。飛車角桂馬が乱舞して、目まぐるしく局面が変わっていく。
「はい、では次は師匠に関する話です。……あ、僕だ」
「加島君、あんまり師匠の話しないよね」
「会う機会も少なくて。初めて挨拶に行ったとき、『プロになれなさそうな顔だなあ』って言われた」
「あー」
「納得しないで」
「勝負師って顔じゃないもんね」
「優しそうってこと?」
「弱そう」
「まあ、そういうことだろうね……。次点二回の時も相談したんだけど、『次いつチャンスが巡ってくるかわからないんだから絶対権利を行使しろ』って言われた」
「そりゃそうよ」
<刃菜子の部屋になってる>
<確かに加島先生は優しそう>
<ドラマの記録係役はまってたよなあ>
いよいよ終盤。お互いに玉が薄く、何があってもおかしくない。
「あっ」
福田さんが叫んだ。
「どうしたの」
「玉寄った手が詰めろにならない?」
「うーん? おお」
確かに、早逃げした手が桂馬の打ち場所を作って、詰めろ逃れの詰めろになっている。
「玉寄り!」
「玉寄り!」
「あ、えーと、玉寄りっ」
控室に玉寄りコールが響く。
「あーっ」
「えーっ」
「ああ……」
しかし栗田さんは角を打った。詰めろだが、香車を受けられた手が攻防になっている。これは参った。
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