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「#将棋界今年の100大ニュースの97番目」



 ホワイトボードに新たなお題が追加された。ちなみに考えたのは美鉾である。

 将棋の方は棚橋さんが不思議な優位の築き方をしていた。駒得をしているわけでもなく、自玉が堅いわけでもないのに、相手に有効な手がないのである。誰かが「百年に一人の逸材」と言っていたが、確かにそうなのかもしれない。

 そのまま相手が暴発して、棚橋さんが有利に。外川さんも何とか食いついていたものの、最後は鮮やかに寄せきって棚橋さんが勝利した。

 幸先のいい勝利だ。そして、ここからが監督の手腕の見せどころである。

「連投はしません」

「おっ。どういう作戦?」

「次は、この人で行きます」

 僕が出したのは、福田さんのパネル。

 そう、今回は「栗田さんを落ち着かせてから出そう大作戦」なのである。



 各面に名前の書かれたサイコロを振る。出たのは「栗田」の面だった。

「では、栗田さんの『多分ウケル話』お願いします」

「わー、私だ☆ 昔ね、誰とは言えないけど男性棋士の方にデートに誘われたの」

 なんか衝撃的なことをサラッと語り出した。

「それでね、ドライブに行ったんだけど途中でエンストしちゃって。相手の方はパニックになってたから私が通りかかった人に助けを求めたり交通整理したりしてたら、『あなたにはかないません。投了です』って言ったから、『投了はいいからもっとしゃきっとしてください☆』って言っちゃったの☆ アハハ☆」

 栗田さんは楽しそうだったが、僕と棚橋さんは笑っていいものやらどうやらで困ってしまった。



<すげえ話しだしたw>

<相手誰だろう>

<エンストって……何坂?>

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