#チームネタ将の本選

4-1

「先生たち、ガンバレよ!」

 ニコニコの元横綱は、そう言うと手を振りながら去っていった。

 決勝戦に備えて僕たちは、最後の会議をすることになった。せっかくなのでおいしいものを食べようということになり、元横綱鷹昇龍が経営するちゃんこ屋に来たのである。事前にその旨を伝えたところ、なんとわざわざ顔を出してくれたのだ。

 ちなみに代金も一割引にしてもらった。味方にするとこんなに心強い人はいない。

 今日は撮影もしているのだが、スタッフも本当に元横綱が来たので驚いていた。

「加島君、すごい人脈だね☆」

「いやあ、なんかたまたま」

 店内はとてもオーソドックスな作りだったが、一枚、大きな写真が飾られていた。それはまだ髷も結えない若い青年で、下に「王将龍」の文字があった。

「すごい筋肉」

 福田さんが目をぱちくりさせながらつぶやく。確かに力士と言われて思い浮かべる体型ではなく、筋肉質でそれほど太くも見えなかった。

「さすが横綱の甥。横綱の兄弟もモンゴル相撲やプロレスで活躍しているからね」

 王将龍は将棋も好きで、ひょっとしたらこちらの世界に来たかもしないのだ。そうしたらとりあえず見た目は一番強い棋士になっていたことだろう。

「じゃあ、本題を始めましょう」

「そうだね。三人の反省点を聞いていきたいんだけど。福田さんは?」

「私はとにかく一戦目の最後。あそこで決められないと。勝負強さが足りない」

「なるほど。では、栗田さんは?」

「攻めすぎちゃった☆」

「ですね……。でもまあ、持ち味ですし。棚橋さんはどうかな?」

「終盤が弱いので、時間が短いのはネックになりました」

「うーん、序盤でどれだけ有利になり得るかは大事だよね」

 それぞれ、自分の課題ははっきりとわかっているようだ。

「で、決勝トーナメントまでにすべきことは?」

「判断力を磨くトレーニング……面白いもの」

「そうこなくっちゃ」

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