3-4

「振り飛車と掛けまして釣り好きだけど料理下手な人と解きます」

「その心は?」

「さばけないとがっかりするでしょう」

「棚橋さんうまい。では次栗田さん」

「必至と掛けまして気負いすぎたネタ将と解きます☆」

「ほう。その心は?」

「受けないでしょう☆」



<なんでこの大事な一番でなぞかけやってんだよw>

<栗田さんがネタ将って言った!>

<どんだけ準備してるんだよ。対局以外で>



 福田さんはうまいこと指している。元々筋の良い将棋で、組み立てが上手い。ただ、20秒将棋ということもあって間違わずに指し続けるのは難しい。だんだんと怪しくなってきた。

「いやあ、これは逆転しやすい」

「そうなんですか?」

「詰みそうで詰まないと、余計なこと読まなきゃいけないからね」

「なるほど」

 棚橋さんの視線は常に鋭い。最年少ということで注目されているが、単純に「強そう」である。福田さんはきっと、プロになる前から棚橋さんに注目していた。「将来ライバルになる人間」として。

 そしてそんな彼女の前で、大事な一局を負けたくはなかったはずだ。しかし局面はすでに苦しくなっている。

 福田さんの表情が歪んでいる。チームの勝敗が決まる一戦、そう簡単に投げるわけにはいかない。

 最後は三手詰めの形になって、福田さんは投了した。

 うつむいた彼女の肩が揺れていた。

 こうして、チームネタ将の初戦は敗北ということになった。


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