3-2

「えー、すごい!」

 福田さんが思わず叫んだ。

 栗田さんは対局が始まると背筋をピンと伸ばし、凛々しい表情になった。本当に惚れ惚れするぐらいかっこいい姿である。そして相手の雁木に対して、居玉のままガンガン攻め立てていった。この攻撃力で数々のタイトルを獲得してきたのだが、とにかくすさまじい攻めである。

「見守るしかないですね。私たちは私たちにできることをしましょう」

 棚橋さんはいたって冷静だ。そして、テーブルの上には大きな箱が一つ用意されている。

「監督、そろそろ始めようか」

「わかった」

 僕は箱の中に手を入れ、一枚の紙きれを取り出す。

「うん。えー、こほん。第1問です。将棋ソフトの発達により将棋の真理が解明されるかもしれないなどと言われますが、そこで新しいルールを付け加えてはどうかなどとも言われます。そこで皆さん、将棋の新しいルールを考えてください。私が『それでどうなりますか?』と尋ねますので、もう一言お願いします」

「はいっ」

「福田さん早かった」

「将棋に、『可愛かったら持ち時間が増える』ルールを追加します」

「それでどうなりますか?」

「私が最強になります」

「ソウデスネー」

「ちょっと何よ」

「はい」

「はい、棚橋さん」

「将棋に、『旧支配者』という駒を加えます」

「え? あ、それでどうなりますか?」

「それは誰にもわかりませんがたぶん大変なことに……」

「どんなオチ?!」



<ちょっ、なんかリアル大喜利始まった!>

<そのための和服?>

<棚橋さんどういう趣味してんの>



 控室で大喜利をしようというのは福田さんの案だったが、予想以上に二人の答えが変だった。緊張がなくなるはずということだったが、司会進行する僕は緊張しっぱなしである。まあ、対局するわけではないのでいいのだが……

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