チームネタ将の予選
3-1
「それでは、チームネタ将の皆さんです」
呼び込まれて、スタジオに入っていく。福田さん、栗田さん、棚橋さんの順番だ。そして最後は監督の僕である。
「写真の方ではヒールレスラーになっていますが、今日は皆さんさわやかな和服で登場なのですね」
アナウンサーのように喋りが流暢だが、司会は女流棋士の徳島女流二段である。将棋界には芸達者な人が多い。
「ファンの方々にアンケートを採って決めました。チームネタ将は皆様とともに作り上げていくチームです」
福田さんはカメラ目線で宣言する。
「今日の対戦相手はチーム蟹蟹ですが」
「蟹はおいしく食べます」
チーム蟹蟹は、山谷女流三段率いる北陸三県出身者のチームである。事前動画では自分たちで獲った蟹を食べていた。
「監督の加島四段には作戦などありますか」
「とりあえず落ち着いて、ですね。対局にはスマホが持ち込めないので、しばらくファンの皆様の反応が見られないのが残念です」
「なるほど。ネタ将というのは、私はあまりなじみがないのですがどういうものなのですか」
「えー、僕が説明? いや、まあ、将棋を題材になんでも楽しむというか。様々な知識と発想力を組み合わせた知的行為……と誰かが言っていた気がします」
「すごいんですね」
「すごいんでしょうか。僕はネタ将ではないのでよくわからないんですが……」
「そうなんでてすか。では、ネタ将見習い?」
「え? どうなんでしょう」
なんで僕が追及されているんだ。
「監督の今後も要注目ですね。では続いて、チーム蟹蟹の入場です……」
団体戦は九番勝負で、先に5勝した方が勝利となる。ただし、一人が出られるのは3回まで、勝敗が決まるまでに必ず1戦以上しなければならない。
事前に、出場順は全て僕に任されることになっていた。責任重大である。
「いよいよね」
そう言って福田さんは、拳を握った。
控室のテーブルに、四角く座る僕ら。目の前には検討用の盤駒があり、作戦会議用のホワイトボードも用意されていた。ちなみにホワイトボードには「#将棋の応援グッズでやめてほしいもの」と書かれていた。ネタ将たちへのお題提供である。
「緊張してきました」
そう言って棚橋さんは眼鏡をくいっと持ち上げた。落ち着いているように見えてもまだ中学生である。生中継の番組というのも初めてだろう。
「大丈夫☆ じゃあ私、行って来るね☆」
そう言って、栗田さんは手を振りながら部屋を出ていった。初戦は、レジェンドの大ベテランに託すことにしたのである。
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