2-2

「はい、では衣装を決めましょう」

 練習対局が終わるや否や、福田さんがそんなことを言いだした。

「衣装?」

「視聴者を楽しませるには、大事でしょ」

 まあ、そうだけれど。男性棋士の場合、ネクタイにこだわっているチームはあったものの、どこもだいたい普通のスーツだった。

「ドレスとか着てみたいな☆」

「ここは和服がいいかと思ったけれど」

「僭越ながら。福田さんはいつもこういう時にファンへのアンケートをしていたと思います」

「確かに。じゃあ、今回もみんなに決めてもらうことにしましょう」



≪teamnetashow


大会で着る衣装を決めたたいと思います。さあ、皆さんはどれがいい?(福田)


1.和服(福田案)

2.ドレス(栗田案)

3.ワンピース(棚橋案)

4.メイド服(監督の趣味)≫



「え、ちょっと、何勝手に僕の趣味決めてるんですか」

「いいじゃない。ネタ将は受けてなんぼよ」

「わあ、メイド服も着てみたいかも☆」

「私は遠慮したいものです」

 


 ちなみに予想に反してファンの皆さんの良識のおかげか、和服が1位の滑り出しだった。ただ、2位はメイド服だった。油断ならない。いや、見てみたい気持ちはあるけれど。

「実際のところどうなのよ」

「え」

「加島君は何を着てほしいの?」

「いやあ、あの……」

「どうなの」

「意外と僕、女の子はズボンを履いているのが好きかも」

「つまんなーい」

 そう言われても。

 ちなみに動画では出遅れたものの、やはりSNSでは福田さんに一日の長があるのか、チームアカウントのフォロワー数はチームネタ将が一番多い。ただ、チーム天の川との差はわずかだ。

「さあ、まだまだ仕掛けるからね!」

 福田さんは、対局が終わってからの方が気合いが入っていた。

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