1-3
「えっ、チームネタ将の監督!」
美鉾がリアルに飛び上がった。
「そうなんだ。明日ドラフトの様子が放送されて、その時に情報解禁だから、まだみんなには内緒だよ」
「すごいすごい! ネタ将でチームだなんて!」
僕の妹はネタ将である。だから、大変興奮している。
「いやまあ、今のところネタ将は福田さんだけなんだけど」
「兄様も立派なネタ将ですよ」
「えー」
濡れ衣だ。昔、美鉾が間違えて僕のアカウントで投稿し、それが受けてしまったのだ。僕自身は断じてネタ将ではない。
「メンバーは誰なんですか」
「栗田さんと棚橋さん」
「すごい!」
「すごい……のか?」
「栗田さんは昔の雑誌で文章見ましたけど、ネタ将の素質がありまくりです!」
「そうなの?」
「棚橋さんはまだ若いし、抜群に頭がいいから、今から英才教育したら一流のネタ将になれます!」
「なっていいの?」
「すごい。ワクワクします! 神の恵みです!」
「そ、そうか」
なんかこう、もっと別の道で才能を発揮してほしい気もする。
「それで、私に相談って何ですか」
「いや実は、チーム紹介動画をとるんだけど、何がいいかなー、と。ファン代表として聞いてみたいんだ」
「なんか案が出たんですか?」
「まあ、出てるけど……」
先日の会議にて。
「やっぱり、まだどのチームもやってないことをしたいわよね」
福田さんの鼻息は荒い。
「どういうのが受けるのかなっ☆」
「最近はいろいろな動画がバズってるから、それを参考に」
「あ、あの、コンビニの冷蔵庫に入ってみた、とか☆」
「絶対だめです」
知らなかったのだが、栗田さんはかなり天然だった。対局中の凛とした感じからは想像できなかった。
「あの……」
「はい、棚橋さん」
「みんなで漢検一級目指すとか」
「ちょっと求められる努力が大きすぎるかな」
棚橋さんはとてもまじめだ。まじめゆえに発想がぶっ飛んでいるような気もする。
大丈夫なのか、このチーム?
「監督はどう?」
「漢検じゃなくても、チャレンジする系がいいんじゃないかな。応援してもらえるような」
「そうねえ」
「そんなわけで、何かにチャレンジするのがいいと思うんだ」
「いいですね! そういえばバンジーやってるチームありましたね」
「あれは良かったね。ただ、同じようなのはちょっとなあ」
「あ、あれはどうですか? 路線バスの旅」
「あ、ロコロの。でもパクリじゃな」
「ちょっとアレンジして。本人に許可貰えばいいかも」
「なるほど」
さすが美鉾、本人に許可をもらうという発想が僕にはなかった。ちゃんと若者文化の中で生きている気がする。
「とりあえず連絡とってみるか」
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