第5話「おっさん二度目の転生を果たす②」
元の世界に残した家族との、別離の辛さに耐える……
そんなリュウを、華麗にスルーして、ルイはきっぱり言い放つ。
「君の、元居た世界の情報は以上!」
「そ、そうですか……ありがとうございました」
何となく、これ以上は『家族の状況』を聞けない……
有無を言わさぬ雰囲気が、ルイにはあった。
とりあえず家族は『無事で幸せ』だと思い、リュウは気持ちを切り替える。
「……でも、ルイ様。そのご様子だと、俺への話にはまだ続きがあるんですよね?」
「うん! その通り! 話を戻すとね、あの壮絶な戦いが原因で、リュウ君の魂は酷く損傷した。だから天界の病院へ回収し、修復していたんだ」
「俺の魂を修復? え? て、天界の病院って!?」
改めて、リュウは周囲を見渡す。
病院とはいっても……
リュウの知る病院とは全く違う。
何もない空間、そう、真っ白な空間が広がるだけである。
そもそも、天界がどのような場所か知らないのだから、尚更である。
状況が見えないリュウへ、管理神ルイの話は続いている。
「うん! 幸いにも命は助かったけど、今回に限ってはリュウ君、危なかったよ。もう少しで、魂含め全てが無に帰るところだったもんねぇ」
「え? 無に帰る? あ、あれ?」
「あははっ、気付いたの? 今頃ぉ? もう、おとぼけさんなんだからぁ」
「あ、ああ……お、俺の!? か、身体が!? な、ないっ!!! 折角、いちから、み~っちり、究極まで鍛え上げたのにっ」
ここで、リュウは初めて気が付いた。
何とも間抜けな話だが、家族の安否も含めた、管理神ルイとの会話に夢中で……
他の事を、一切気にしていなかったのだ。
自分の身体が存在せず、意識だけである事を認識し、呆然とするリュウ。
片や、ルイは、「しれっ」と言う。
「うん、残念ながら、鍛えに鍛えたムキムキの勇者リュウ君の身体はね、溶けてなくなっちゃった。君と魔王の技の強烈な衝突でねぇ」
「と、溶けてって……そんなぁ、やっと最終レベル99まで行ったのにぃ」
ゲームで、レベル1のひょっこから、じっくり育てたキャラが……
いきなりのロスト……
そんな気持ちで、泣きそうになるリュウを尻目に、ルイは「にこにこ」している。
ノープロブレムだよぉ!
問題なしだよぉ!
そんなお茶目な声が、リュウの心にはしっかり聞こえて来る。
「まあ、任務完遂のご褒美だと思って、とりあえず休養してよ。魂の修復が済んだら、すぐに新しい身体をあげる。とはいっても、前と全く同じ容姿なんだけどね」
ああ、また『リセット』って奴か……
ようやく状況がつかめ、リュウは大きくため息をついた。
今回が、初めての死ではない。
もう二度目だ。
と、なればリュウにも、少しずつ余裕が戻って来ていた。
「あの、ルイ様」
「何?」
二度目の転生が「ありそう」だと分かって、リュウは改めてお願いをする。
そのお願いとは……
「頼みがあります、ルイ様」
「頼み?」
「はい! ぜひぜひ!」
「何? 言ってみてよ。内容によっては対応するよ~ん」
「本当ですか? 実は俺、自分の顔と身体には、すご~く愛着はあるんすけど……どうせ生まれ変わるなら、もう少しいけてる顔と身体が欲しいっすよ。いわゆるキャラクターメイキングって奴でっす」
あの憎たらしい魔王に、「足が臭いおっさん」だの、「顔が不細工」だの、散々言われた、リュウの忸怩たる思い。
あまりもイケメンな魔王に全く反論出来ず、どれだけ悔しかった事か……
しかし!
ルイは、リュウの願いを、あっさり却下する。
「駄目!」
「え? 駄目なんですか?」
「うん! すっごく気持ちは分かるけど」
「ええっ? 気持ちは分かる? じゃあなんで?」
「うん! 前世の君の、元の姿のアレンジバージョン、勇者リュウのいかつい顔と身体というキャラクターはね、ウチの部の女子に結構人気があるんだ。だから現状では変えない」
ウチの部の女子に?
結構人気がある?
リュウは、全く意味が分からない。
「はぁ? 何すか、それ? ルイ様、ウチの部って、どういう意味ですか?」
「文字通りさ。ああ、そうか、君に言ってなかったっけ」
ルイは、勇者に伝える『大事な事』を、すっかり忘れていたようである。
「何をです?」
「リュウ君、君はさぁ、今回、天界で二度目の転生をしたじゃない」
「まあ、現状で身体はありませんけど……結果的にそうなりますね」
「うん! この天界でってところが凄く重要なんだ。もう正式な辞令が出ているし」
「じ、辞令? 正式って、一体何なんすか?」
「ジャジャ~ン! リュウ君はぁ、選ばれましたぁ! おめでと~」
「は?」
「うん! 人間界の詐欺では良くある怪しいセリフだけど、天界では、だいじょうぶいっ! つまりぃ、選ばれたって言うのは、僕の部下にって事、すなわち君はぁ、神様になるのさぁ」
「はぁ!? 俺が、神様って……」
最初の転生の時は勇者へ……
そして今度は神!?
あまりにも唐突、予想外の展開に、リュウは、またも呆然としていたのだった。
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