第319話 止めてよね。レイ達が本気で戦ったら勝てるはずないのに
1日作業に充ててその翌日、シルバはエイルとレイ、マリナと共に
昨日は一昨日の続きで、アリエルが外壁を創った集落にシティバリアを展開し、基地の建造作業を行った。
それによって物資の搬入はまだだけれど、フロンティア基地の西に新たな拠点が完成した。
この基地は異界に繋がる壁を軸として、ムラサメ公国のムラマサと線対称な位置にある。
名前はマリアがクワナを希望し、シルバ達は特に拘りがなかったので新しい既知はクワナ基地に決まった。
マリアとティファーナが気合を入れて作業したこともあり、クワナ基地にも
これにより、ムラマサ城とフロンティア基地、クワナ基地は自由に行き来できるようになった。
この情報は当面の間ムラサメ家と騎士団のみが知るトップシークレットである。
さて、シルバ達はクワナ基地から蜘蛛女王とその配下を倒しに南の森に行く。
「エイルって虫型モンスターは得意じゃなかったよね? 無理してないか?」
「だ、大丈夫です。マリナが虹魔石を欲しがったんですから、主人の私だけムラマサで待ってるなんてことはしたくありません。ちゃんと私も同行します」
シルバならエイルに無理をさせず、マリナだけ預かって
しかし、それではマリナの成長をシルバ任せにしてしまうことになる。
主人として従魔の成長はきちんと見守るんだとエイルが言うものだから、シルバはエイルの心構えに感心した。
『エイル、しっかり捕まってて下さい。シルバードラゴンフライの群れです』
「わかりました」
マリナに注意され、エイルは振り落とされないようにマリナの体にしがみついた。
シルバードラゴンフライの群れは特殊な隊列を組み、敵に対して自分達を銀色の龍に見せようとしている。
知能の低いモンスターなら騙されるかもしれないが、事前にシルバードラゴンフライの群れだとわかっていれば怖がる理由はない。
『邪魔です』
マリナは
水の中では息ができないから、シルバードラゴンフライ達は次々に溺れていく。
5分とかからずに全てが溺れて力尽きた。
この数を解体するのは面倒であり、銀魔石はレイもマリナも欲しがらないからそのままレイの<
見せかけのハッタリで勝負するシルバードラゴンフライの後は、シルバー級の虫型モンスターの混成集団が現れた。
「シルバーリーチにシルバースカラベ、シルバーセンチピードって今度は陸戦型だけで来たか」
シルバーリーチは敵の血を吸ってパワーアップし、敵の力を削るワンパターン戦法に特化したモンスターで空は飛べない。
シルバースカラベは銀色の糞玉を転がしながら進むモンスターで、これもまた飛べない。
銀の塊だと思って欲をかけば、糞に触れてショックを受けること間違いなしだ。
シルバーセンチピードは魔法攻撃耐性が高い甲殻に守られているけれど、物理攻撃態勢は並だから接近戦で叩けば良い。
この種族もまた当然のことながら飛べない。
だからこそ、シルバは陸戦型だけと口にした訳だ。
「レイ、一昨日会得したスキルを使ってみよう」
『は~い』
レイはシルバの指示を受けて
バタバタと音を立てて倒れていき、レイが技を解除した時にはどの個体も力尽きていた。
どの個体も積極的に近付きたいと思えるモンスターではないから、エイルはレイの
シルバースカラベの糞は地面にとって栄養が豊富だが、それ自体を持って行きたいとは思えない。
したがって、シルバはムラマサ城から持って来た
何を取り出したかと言えば、トラッシュボックスだ。
箱の中に入れた燃えるゴミを肥料に変換する
シルバースカラベの糞はトラッシュボックスによって肥料に変換された。
肥料専用の袋に流し込めば、シルバースカラベの糞の処理は終わった。
レイの<
「なかなかゴールド級モンスターが現れませんね」
「まだ様子見をしてるんだろうさ。この程度の奴等なんていくらいても変わらないんだが、蜘蛛女王は俺達のことを舐めてるらしい」
『止めてよね。レイ達が本気で戦ったら勝てるはずないのに』
レイはプンスカと音を立てそうなぐらい不機嫌である。
シルバがレイを宥めるべくその頭を撫でると、10秒もせずにレイの機嫌が直った。
蜘蛛女王とその配下の探索を再開して5分ぐらい経ち、シルバ達はこちらに向かって来る複数の金色の球体を見つけた。
マジフォンのモンスター図鑑機能によれば、それらはゴールドピルパグという虫型モンスターだった。
スキル構成は迷惑な走り屋と呼ぶべきもので、空を飛んでいなかったらダブルノックアウト上等で突撃して来るだろうことは容易に想像できた。
『突撃なんてさせませんよ』
マリナがそう言って
その個体が更に後ろの個体にぶつかるように吹き飛ばされという流れが連鎖し、爆走していた5体のゴールドピルパグは連鎖衝突事故によって動きを止めた。
「レイ、やっちゃって」
『任せて』
レイは
マリナは金魔石を欲しがらなかったので、シルバは本当にマリナがレインボー級に足を踏み入れたのだと悟った。
ゴールドピルパグの群れもレイの<
そこには黒光りする巨大な甲虫がいて、シルバ達を見下ろしていた。
マリアが過去に遭遇したことのあるモンスターであってくれと祈りつつ、シルバはマジフォンのモンスター図鑑機能で調べてみた。
すると、その祈りが届いたのかマジフォンの画面にその情報が現れた。
-----------------------------------------
名前:なし 種族:アダマスビートル
性別:雄
-----------------------------------------
HP:S
MP:S
STR:S
VIT:S
DEX:S
AGI:S
INT:S
LUK:S
-----------------------------------------
スキル:<
<
<
状態:嘲笑
-----------------------------------------
(自分より弱い奴に嘲笑されるのはムカつく)
シルバはアダマスビートルに見下されていることにムカついた。
マリナに譲らず、身の程を教えてやろうかと思わなくもないが、アダマスビートルはマリナがレインボー級モンスターになるための踏み台にするから思い止まった。
エイルもマジフォンを見て馬鹿にされていると知り、ムッとした表情でマリナに指示を出す。
「マリナ、アダマスビートルが私達を馬鹿にしてます。身の程を思い知らせてあげなさい」
『わかりました』
油断しているアダマスビートルに対し、マリナは<
甲殻は硬いから、側面や後ろ、上からの攻撃には強いかもしれないが、腹は大して固くないせいでアダマスビートルはいきなり大ダメージを負って墜落した。
脚から墜落すれば追撃されることもなかっただろうが、墜落中にバランスを崩して上下が反転してしまった。
アダマスビートルは背中から落ちてしまい、足をばたつかせて比較的柔らかい部位をむき出しにしている。
『これで終わりです』
今度は<
ピクリとも動かなくなったアダマスビートルを見て、マリナはレイのようにドヤ顔を披露した。
『油断禁物です』
「マリナ、よくやりました。胸がスッとしましたよ」
エイルはマリナが自力でアダマスビートルを倒したことを嬉しく思い、優しくその頭を撫でた。
それからアダマスビートルの虹魔石を回収し、マリナがそれを取り込むことでレインボー級モンスターに昇格した。
従魔でレインボー級モンスターに到達したのはマリナが2番目なので、マリナがリトに追い抜かれずにホッとしたのはここだけの話である。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます