第318話 ガッチャ! 楽しい戦闘だったのよっ
アリエルは自分の力では悪魔王を倒せないと判断し、シルバの代わりにマジフォンのモンスター図鑑で悪魔王について調べてみた。
シルバがデーモンロイヤルガードの情報を調べられたのだから、悪魔王の情報だってあるのではないかと思ったのだ。
その予想は当たっており、マジフォンの画面には以下の通りに情報が映し出された。
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名前:なし 種族:デーモンクイーン
性別:雌
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HP:S
MP:S
STR:S
VIT:S
DEX:S
AGI:S
INT:S
LUK:S
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スキル:<
<
<
状態:興味
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「シルバ君、そいつは闇と雷、氷魔法が使える。それと、他者の体液を取り込むことで成長するスキルまで持ってる」
「そんなことまでわかっちゃうなんて、手に持ってるそれはすごいのね」
「まあな。というか、お前とは違う個体を俺の師匠が倒したらしいな」
「ふーん。あの
デーモンクイーンは自分の母親が突然姿を消した理由を知り、少しだけスッキリした表情になった。
「身内が倒されてその反応とは冷たいじゃないか」
「別に。あの婆は強欲過ぎたのよ。ちょっとでも気になる種族がいれば、誘惑してその体液を奪って新しいデーモンを産んでたもの。淫魔かっての」
「なるほど。それでスケイルデーモンとかパワードデーモンみたいな変種もいた訳か」
「そーいうこと。さあ、話は終わりよ。
「別にお前に嫌われても一向に構わんよっと」
話の途中で一瞬で距離を詰め、デーモンクイーンは正拳突きを繰り出して来たが、シルバはそれをあっさり躱した。
デーモンクイーンは一撃躱されたところで攻撃を止めず、ラッシュを放ってシルバを一刻も早く戦わせようとする。
シルバもこれ以上のお喋りは続くまいと判断したのか、思考を戦闘モードに切り替える。
「參式雷の型:雷反射」
シルバがラッシュを捌けば捌く程、デーモンクイーンはシルバが纏う雷に寄るダメージを負っていく。
「痺れるわー。今ならあの婆の気持ちがちょっとだけわかる。
デーモンクイーンは先程までの気怠そうな雰囲気を何処に置いて来たのか、今は雄を狩ろうとする雌の表情をしている。
ラッシュを繰り出しつつも<
それに対してシルバは少しも<
自分の妻達は美人揃いだからシルバに魅了は効かないようだ。
「間に合ってるんで結構です」
「そう固いことを言わずに。あっ、でも、下の方は硬くしてね」
「下ネタじゃねえか! 肆式光の型:過癒壊戒!」
「やだー、バイオレンスなのねー」
攻めに転じたシルバの拳とデーモンクイーンの拳がぶつかり合い、デーモンクイーンの拳がシルバの攻撃によって自壊していく。
<
『ご主人を困らせるなんて駄目!』
レイはシルバが困っていると思い、デーモンクイーンに側面から
「おっとっと」
わざとらしい声を出しつつ、デーモンクイーンはレイの攻撃を避けるために玉座まで後退した。
余裕があるような素振りを見せているが、レイの光属性の攻撃をまともに喰らったら危険だとわかっているから、下手に弾いたり受け流したりせずに避けたのだ。
「レイ、助かった。ここからは俺もギアを上げる」
そう言ってシルバは熱尖拳タルウィと渇尖拳ザリチュを召喚し、そのまま両手に着用した。
『アタシ達の出番なのよっ』
『相手、強敵。ワクワク』
彼女達はやる気満々だった。
デーモンクイーンはシルバが召喚した武器を見て喜ぶ。
「まあ、素敵な武器ね。惜しむらくは呪いが呪いじゃなくなってることかしら」
シルバと魂約した熱尖拳タルウィと渇尖拳ザリチュには、最早シルバを呪うつもりなんて微塵もない。
呪われた武器らしさを失った熱尖拳タルウィと渇尖拳ザリチュを見て、面白い物が見れたと喜ぶのと同時に少々残念だとも思っているようだ。
デーモンクイーンは接近戦主体の攻撃から、遠距離攻撃主体に切り替えて
「伍式闇の型:妲己尾冒」
暗黒に染まった砲撃はシルバに吸収され、それがシルバの尾骶骨から5本の尻尾として変換される。
その瞬間、デーモンクイーンが目を♡にして攻撃を仕掛ける。
「欲しい! 貴方が欲しい!」
闇属性の攻撃は吸収されてしまうとわかったので、デーモンクイーンは
シルバに魅了されてしまっても、デーモンクイーンはシルバを倒してその身をいただくという思考回路らしく、攻撃の手は一切緩めたりしない。
「伍式雷の型:雷呑大矛」
自分に落ちて来た雷を容易く吸収し、シルバは更にパワーアップした。
またしても攻撃を吸収されたデーモンクイーンは、益々シルバを欲してしまう。
「貴方の精を絞り尽くせば、私は蜘蛛女とちまちま戦わなくて済む! 竜王だってぶち殺せるわ!」
『ご主人はレイが守る!』
レイはシルバの貞操が危ないと思ったらしく、加減することなく<
最早シルバだけしか眼中になかったため、デーモンクイーンはレイの攻撃に気づくのが遅れてまともに光のブレスを受けてしまった。
デーモンクイーンの体に大穴が開き、それを修復せんと<
「陸式雷の型:鳴神」
「ごひゅっ!?」
<
右腕の熱尖拳タルウィを使った攻撃だったから、火傷の追加効果もあって回復が全く進まないのだ。
シルバはもう一撃入れられると思い、今度は左腕から攻撃を仕掛ける。
「陸式闇の型:凶星」
大ダメージを負っているため、デーモンクイーンには避ける余力がなかった。
その結果、自身の体に3つ目の大穴が開いてしまう訳だがどうしようもない。
しかも、渇尖拳ザリチュの追加効果で体が乾燥していく苦しみまで味わう羽目になった。
ただし、シルバはこれでもまだ気を抜いてはいけないと気を引き締める。
体に3つも大きな穴が開いているというのに、未だにデーモンクイーンは力尽きていないのだから当然だ。
「弐式風の型:鎌鼬」
確実に息の根を止めるまで油断できないから、シルバは風の刃でデーモンクイーンの首を刎ねた。
大ダメージを連続して受け、熱尖拳タルウィと渇尖拳ザリチュの追加効果まで喰らえば、デーモンクイーンの<
首がゴトリと落ちてようやく、デーモンクイーンは力尽きた。
『ガッチャ! 楽しい戦闘だったのよっ』
『私達、活躍。気分、上々』
(タルウィもザリチュもありがとな。おかげで助かったよ)
熱尖拳タルウィと渇尖拳ザリチュはお礼を言われ、また強敵が出たら召喚してほしいと告げてシルバに送還された。
その後、シルバはアリエルに抱き着かれた。
「シルバ君、ありがとう。これで悪魔王の存在を知る者はかなり限られたよ」
「そうだった。悪魔王を倒しに来たのはそういう理由もあったな」
シルバは将来的に
だからこそ、アリエルが悪魔王を倒したがっていた理由を思い出して苦笑した。
アリエルの頭を撫でて彼女の気が済んだ後、シルバは目だけで虹魔石が欲しいと訴えるレイのためにデーモンクイーンとデーモンロイヤルガードの体から虹魔石を取り出し、それをレイに与える。
「レイ、ナイスアシストだった。おあがり」
『いただきま~す!』
2つの虹魔石を取り込んだことにより、レイは
この技には展開した領域内を無酸素状態にして窒息させる効果があり、外傷を与えずに倒すか気絶させたい時にぴったりである。
デーモンクイーンを倒したため、積極的に倒すべきは蜘蛛女王とその配下だけとなった。
流石にこのまま蜘蛛女王達と連続して戦う訳にもいかないから、シルバ達はムラマサ城へと帰還した。
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