第304話 異界よ、私は帰って来た!
ティファーナがホッとしているのを見て、マリアは
「
「さっきから
「感情表現が控えめなティファーナの気持ちを代弁してみたの」
「あの、私は地面に足が着いたことにホッとしただけで、
「なん・・・だと・・・?」
ネタを披露したそれっぽい理由を言ってみたら、全然的外れだったと知ってマリアは膝から崩れ落ちた。
「マリア、ふざけるのはその辺にしといてくれ。それよりも、さっき空から見てて思ったんだけど、
「そうみたいね。よく考えれば
「「「あぁ、確かに」」」
マリアの気づきにシルバ達はポンと手を打った。
「ムラサメ公国で考えるなら、モンスターファームの北の海も北上し続ければ
「それはあり得る。次はそっちから行ってみよう」
マリアとシルバが
「ゴールドフィドラーとシルバーフィドラーの群れね」
『ご主人、蟹だよ蟹! 蟹が食べられるよ!』
『蟹が食べられるなら気合を入れましょうか』
『蟹、ウマウマ』
マリアがモンスター名を告げた時、従魔組は既にやる気満々だった。
以前食べたカルキノスが美味しかったらしく、また蟹が食べたいと思っていたらしい。
「ここはレイ達に任せてみようかな」
『任せて! レイ達だけでやっちゃうね!』
シルバに任せると言われ、レイとマリナ、リトは頷き合ってから行動を開始する。
最初に動いたのはリトであり、
自分達にかかる重力が増えたことにより、シルバーフィドラーの群れは完全に圧し潰されており、辛うじて動けるのはゴールドフィドラーだけだった。
次に動いたのはマリナで、
『即席ハンマーです』
ゴールドフィドラーの殻の方がシルバーフィドラーの殻よりも硬いので、マリナは鎖で繋がれたゴールドフィドラーを振り回して次々にシルバーフィドラーを倒していった。
シルバーフィドラーが全滅したところでマリナが
『とどめだよ』
レイはゴールドフィドラーを甚振るつもりはないから、
突っかかって来たモンスターを全て仕留めたと思ったその時、虹色に輝く甲殻の蟹型モンスターが現れた。
「レインボーフィドラーか。手下を全滅させられて親玉が現れた訳だ」
『レイがやる!』
「やってご覧。もしもの時はサポートするから頑張って」
『うん!』
レイは
レインボーフィドラーは
『甘いよ』
<
『凍っちゃえ!』
レイの
微塵も動けなくなったレインボーフィドラーだが、これだけで倒せているはずもなく今はただ凍えて動けないだけだ。
『畳みかけちゃうよ!』
レイは
これにはレインボーフィドラーの残っていたHPも削り切れてしまい、完全に動かなくなった。
周囲に敵影がないのを確かめた後、レイはシルバに頬擦りして甘える。
『ご主人、レイの勝利だよ』
「よしよし。ちゃんと見てたぞ。相手がレインボー級モンスターでも技も活かして戦えたのは見事だった」
『エヘヘ♪』
それから、解体と魔石の分配を始めた。
虹魔石はレイに与えられ、金魔石はリトに与えられた。
銀魔石は20個程集まり、今までにストックしていた銀魔石と合わせて100個を超えたため、コンバーターで銀魔水晶にしてからマリナに与えられた。
これで誰かが仲間外れになることなく、3体全てに魔石が行き渡った。
レイは新しい技を会得できなかったようだが、マリナとリトは会得できたらしい。
大量に蟹型モンスターが手に入ったことから、時間も丁度良いのでシルバ達は昼食を取ることにした。
レインボーフィドラーの味が気になるということで、レインボーフィドラーを茹でて食べることが満場一致で決まった。
ところが、レインボーフィドラーは巨体であり、とてもではないがそのまま持参した鍋に入るサイズではない。
「ここは僕の出番だね」
アリエルが<
「出汁がうっすら虹色になってないか?」
「虹色だね」
「レインボー級モンスターに捨てる所はないんでしょうね」
シルバとアリエル、エイルがレインボーフィドラーの出汁に感動していると、マリアがマッシブな藁人形のような物を背負って戻って来た。
「マリア、何狩って来たの?」
「ライスラインよ。シルバに食べさせてあげたお米を覚えてない?」
「あぁ、お米ってそいつから手に入るんだ」
「そうよ。レインボーフィドラーの出汁で炊けば美味しい蟹雑炊が作れるもの」
マリアがそう言った瞬間、シルバの口から涎が出そうになって慌てて表情を引き締めた。
茹でたレインボーフィドラーや蟹雑炊が完成したら実食の時間だ。
いただきますと言ってからというもの、シルバは無言でガツガツとマリアの作った蟹雑炊を食べていた。
残念ながら、まだシルバの胃袋を掴んでいるとは言えないアリエルとエイル、ティファーナは悔しそうにしている。
「目指すべき壁が高過ぎる」
「シルバ君の胃袋を掴むにはまだまだ修行が必要です」
「ハンバーガー以外も作れるようになりたいです」
「みんなの料理も美味しいぞ?」
シルバが悔しそうにしている3人を見て正直な感想を述べた。
それでも、アリエル達は違うんだと首を横に振る。
「僕はシルバ君が涎を垂らすぐらい美味しい料理を作りたいんだ」
「私もシルバ君が夢中になって食べる料理を作りたいです」
「レパートリーを増やしてシルバ様を満足させたいです」
ティファーナだけレベルが違うのだが、細かいことを言ってはいけない。
そこにマリアが悪ノリする。
「フッフッフ。小娘共が私の域に達するには100年早いわ」
「そうだね。マリアさんとは年季が違うもんね」
「老舗のレシピにはなかなか届きませんか」
「初々しさなら勝てるのですが」
アリエル達の発言がマリアのメンタルにダイレクトアタックを決めた。
わなわなと震えながらマリアはシルバに抱き着く。
「シルバ、アリエル達が私を虐めるの!」
「今のは自爆じゃなかった?」
「細かいことは言いっこなしよ!」
「えぇ・・・。まあ、その、マリアが何歳かなんて関係ないと思うぞ。ぶっちゃけ、外見年齢なんてティファーナと同じぐらいなんだし」
ティファーナは20歳なのだが、シルバから見てマリアの外見は20歳ぐらいだと思っている。
そう言われるとマリアも自分に自信を取り戻せたらしく、機嫌が少し良くなった。
「フフン。<
この発言で逆にアリエル達のメンタルにダメージが入った。
「は、早く会得しないと・・・」
「いつまでも全盛期のままの姿でいたいです・・・」
「私もマリアさんのようにずっと若々しくありたいです・・・」
(あぁ、もう。マリアをフォローすればアリエル達が凹むなんて面倒だ)
面倒だと思っても口に出さないだけの配慮がシルバにはあった。
シルバはチラッとレイ達を見て羨ましく感じた。
何故なら、レイ達従魔組はシルバ達の話を聞かずに夢中になって蟹雑炊とレインボーフィドラーを食べているからだ。
自分もレイ達のようにただ食事を楽しみたいのにと思ったけれど、しっかりアリエル達のフォローもして彼女達の機嫌を直させた。
年齢の話で少しわちゃわちゃしたが、美味しい料理で腹を満たしたシルバ達は
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