第305話 笑えよレインボー級モンスター
マリアが軽く周辺の調査がてらライスラインを倒して来たことから、シルバ達はマリアに先導されて探索を再開した。
先導と言っても、マリアとエイルを乗せるマリナがレイよりも前を飛ぶだけだが、今はそれを置いておこう。
「マリアさん、この辺りに危険なモンスターはいませんか? あっ、マリアさんにとってじゃなくて、私やティファーナさんを基準としてですが」
「さっきチラッと見た限りだと、デュラハン率いるリビングアーマーの群れぐらいかな。リビングアーマーはシルバー級で、デュラハンはゴールド級かしらね」
「デュラハンもリビングアーマーも初めて聞きます。どんなモンスターでしょうか?」
「あれよ、あれ」
百聞は一見に如かずだとマリアが指で示した方向には、金色の甲冑を身に纏い、霊馬に乗った首無しの騎士がいた。
その後ろには銀色の甲冑を着てそれぞれの武器を手にした歩兵が隊列を組んで行進している。
レイの背中の上では、シルバ達もデュラハンとリビングアーマーの群れの姿を見てマジフォンのモンスター図鑑機能で詳細を確かめていた。
「思ってたより大したことないな。弐式土の型:斬鉄剣」
シルバはレイの背中から跳躍し、腕からではなく脚から蹴りによって弐式土の型:斬鉄剣を放った。
デュラハンは身に着けていた剣でシルバの攻撃を防ごうとしたが、斬鉄剣と言う通り鉄でも切ってしまう斬撃であり、腕からではなく脚から飛ばした斬撃は通常よりも強くてあっさり剣を切断して甲冑も真っ二つにしてしまった。
レイの背中に着地したシルバはデュラハンが馬霊と共に消えるのを見た。
「またつまらぬものを斬ってしまった」
「じゃあ、僕も動くよ」
アリエルがシルバに続いて
「一丁上がりだな」
「そうだね」
デュラハン達の回収を済ますと、金魔石をリトに与えてからシルバ達は先へと進む。
エリュシカでサウスティアがある場所には、それよりも規模の小さい集落があった。
もしもカリュシエの民がティファーナの姿を見れば、奪還しようとするに違いないから、ティファーナはそうならないように提案する。
「ここから先はカリュシエの民が使ってたことのある集落です。シルバ様、私の姿を別物に変えられませんか?」
「できるはずだ。レイ、頼んでも良いか?」
『は~い』
レイがティファーナに対して<
シルバが今のティファーナの姿を写真に撮って見せると、彼女は自分の姿が別人のものになっていて驚いた。
「すごいですね。耳も肌の色も服も変わってます。ありがとうございます、レイちゃん」
『どういたしまして』
レイはティファーナにお礼を言われて律義に応じた。
ジーナの姿をレイが選んだ理由だが、レイが見覚えのある女性に変身させただけだ。
サテラやタオでも構わなかったけれど、2人のようにティファーナは戦えないから非戦闘員のジーナを選んだのである。
準備ができたところで、集落の上空からレイが集落に向けて<
レイの<
必ず何かしらの反応を示すだろうから、出て来たところを捕まえて割災を起こさせないように
ところが、反応は大小問わず何もなかった。
「この集落は空のようだな」
「カリュシエの民は現在ここを使ってないようですね。あと3つ集落はあるのですが、どこにいるのでしょう?」
「ティファーナはその3つの集落の場所を知ってるのか? 知ってるなら探索の手間が省けるんだけど」
「申し訳ございません。移動の際は人力車に目隠しと耳栓をされて乗せられるため、どこにあるのかわからないんです」
「それはもう、巫女の扱いじゃなくて罪人の護送だろ。いや、ティファーナは何も悪くないんだが」
シルバが困ったように言うのも無理もない。
いくら巫女のティファーナの逃亡を阻止したいとしても、扱い方は罪人の護送なのだからカリュシエの民はやり過ぎだと思ったって当然である。
どうしたものかと悩んでいると、シルバ達のいる集落に向かって来る気配があった。
それは以前、シルバ達がティファーナと出会った日にスレイプニルと戦っていたモンスターだ。
「ヒッポグリフじゃない。珍しいわね」
マリアが知っているモンスターならば、モンスター図鑑機能でそのデータを調べられると判断してシルバ達はマジフォンを開いた。
-----------------------------------------
名前:なし 種族:ヒッポグリフ
性別:雌
-----------------------------------------
HP:S
MP:S
STR:S
VIT:S
DEX:S
AGI:S
INT:S
LUK:S
-----------------------------------------
スキル:<
<
<
状態:興味
-----------------------------------------
(羽ばたく音がしないと思ったら、<
ヒッポグリフが厄介なスキルを会得しているとわかれば、シルバが嫌そうな顔をするのも仕方のないことだ。
それはアリエルやエイルも同様である。
「ギャオォォォォォ!」
ヒッポグリフは叫ぶのと同時に
「俺がやる。伍式風の型:捲土重来」
シルバはヒッポグリフの攻撃を吸収して自分の力に変換してみせた。
それが珍しく思えたようで、ヒッポグリフは
「伍式風の型:捲土重来」
マリアとの修行の成果もあり、シルバは伍式で吸収できる容量が増えた。
吸収するだけ吸収したシルバは反撃に出る。
「壱式風の型:竜巻拳」
「ギャオォォォォォ!」
ヒッポグリフは力比べだと言わんばかりに鳴き、今までの技よりも強い
シルバの攻撃とヒッポグリフの攻撃が衝突し、シルバの攻撃が競り勝ってヒッポグリフに水平方向の竜巻が命中した。
「ギャオ!?」
ダメージを受けた痛みよりも、自分の攻撃が威力負けしたことにヒッポグリフは衝撃を受けていた。
「笑えよレインボー級モンスター。自分の攻撃を上乗せされた気分はどうだレインボー級モンスター?」
「ギャオ!」
シルバの挑発にヒッポグリフはムッとして、<
「伍式火の型:合炎」
これにはヒッポグリフはまたやってしまったと焦り、<
だがちょっと待ってほしい。
シルバは元々接近戦の方が得意だ。
ヒッポグリフはシルバの掌の上で転がされていると言えよう。
熱尖拳タルウィと渇尖拳ザリチュを召喚して装着したシルバは、これで決めるつもりのようだ。
「肆式火の型:祭花火」
<
<
防御の薄いところを集中して攻撃し、爆発と火傷、乾燥の追加攻撃が加わる。
「ギャオォォォォォ!」
想定以上のダメージを受け、ヒッポグリフは絶叫して地面に墜落した。
ヒッポグリフが微塵も動かないため、熱尖拳タルウィと渇尖拳ザリチュは大喜びだった。
『死亡確認なのよっ』
『出番、感謝。気分、爽快』
(助かったよ。タルウィとザリチュのおかげで楽ができた)
シルバは熱尖拳タルウィと渇尖拳ザリチュを労ってから送還し、空から降りて来たレイ達を迎える。
『ご主人、お疲れ様! 圧倒的だったね!』
「なんとかな。いずれはワンパンで倒してみたいものだ。それよりも、虹魔石を取り出してやるからちょっと待っててくれ」
『は~い!』
レイの尻尾は嬉しそうに揺れていた。
ヒッポグリフの解体を済ませ、シルバはレイに虹魔石を与えた。
虹魔石を取り込んだ結果、レイは<
これでデュラハンの霊馬も一撃で昇天させられるようになったのだ。
その後、シルバ達は集落がもぬけの殻だったことを確認し、今日の探索を切り上げてムラマサ城に帰還した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます