第298話 ヒュドラの再生速過ぎるだろ?
ヒュドラの全ての首からレーザーばりに猛毒が吐き出されたが、シルバ達は落ち着いていた。
レイなら防げると確信していたからである。
『まったくもう、品がないね!』
猛毒は全て反射され、パイ投げされたパイの如く顔面にべチャリと音を立てて付着した。
「「「・・・「「ギャァァァァァ!」」・・・」」」
反射されたことが予想外だったのもそうだが、自身の猛毒が顔に当たって焼けるように痛むからヒュドラは悲鳴を上げた。
「レイ、
『任せて!』
レイが自分の指示通りに動いたのを確認すると、シルバは反撃に転ずる。
「弐式雷の型:雷剃・舞」
シルバは自身の猛毒で苦しむヒュドラの首の内、6つを斬り落とすべく雷の斬撃を舞うように放った。
左側から攻めた結果、左側の4本の首と6本目の首は切断できたが、中央の首は硬くて傷をつけるのがやっとだった。
ところが、切断面からすぐに5本の首が再生したのでシルバ達は驚いた。
「ヒュドラの再生速過ぎるだろ?」
「真ん中の首だけ硬いね」
「冗談キツいぜぇ」
『『『クックック』』』
『『『驚いたか人間め』』』
『『『お祈りは済ませたか人間め』』』
ヒュドラはシルバ達の驚く顔が見れたため、先程までとは打って変わって大層気分が良さそうである。
だがちょっと待ってほしい。
この程度でシルバ達が怯むだろうか。
いや、怯むなんてことはあり得ない。
「首が駄目なら体だよね」
『『『・・・『『ヒュグエ!?』』・・・』』』
首を斬り落としてもあっさり回復するならば、胴体を攻撃すれば良いじゃないのとアリエルは
その結果、自分の胴体を貫通する痛みにヒュドラの全ての口から変な声が漏れた。
『僕もやる!』
『同じく』
アリエルの攻撃が効いているとわかると、リトとジェットがそれぞれ
『『『・・・『『痛いだろうがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!』』・・・』』』
足元からグサグサと攻撃されて頭に来たらしく、ヒュドラは
それをシルバが通すはずもなく、アリエルと9本の
「伍式水の型:渦巻」
両手の親指と人差し指をくっつけ、その中に渦巻を発生させれば全ての
「陸式水の型:明鏡止水」
ヒュドラが呼吸するために生じた一瞬の隙を突き、シルバはヒュドラの懐に潜り込んで透き通った水の槍をぶち込んだ。
シルバがヒット&アウェイで離れた途端に激痛が走り、ヒュドラの怒りのボルテージが上がる。
『『『・・・『『小僧ぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!』』・・・』』』
マジギレしているものの、水で集中攻撃すればシルバに吸収されると学習しているからか、ヒュドラの反撃は
「ジェット!」
『見せ場が来た!』
ロウに皆まで言うなと言いたげな態度で応じ、ジェットは
そのおかげでシルバ達は水の牢獄に閉じ込められることはなく、分厚い氷の防壁を得ることに成功した。
自分達の攻撃を利用されて悔しくないはずがなく、ヒュドラは怒りを
分厚くとも
蒸発せずに残った水が床を覆い始めるのを見て、シルバはあることを閃いた。
「レイ、背中に乗せてくれ。アリエルとロウ先輩も早く」
『うん!』
「「わかった」」
シルバに何か策があるとわかればアリエル達はすぐに動く。
全員がレイの背中に乗ったことを確認し、シルバはヒュドラを煽る。
「どうしたよヒュドラ? そんなもんか?」
『『『・・・『『黙れ小僧ぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!』』・・・』』』
ヒュドラの全ての口に圧縮された水が集まり、それがシルバ達に向かって放たれる。
シルバに吸収されることを避けるため、
それはシルバにとって想定通りの行動だった。
「レイ!」
『わかってるよご主人!』
レイはシルバが何を言いたいか先読みしており、
またしても自らの攻撃が反射されてダメージを負うが、ヒュドラには<
もっとも、反射ダメージはシルバにとって副産物でしかなく、彼の狙いはヒュドラのそれぞれの顔にぶつかって地面に溜まった水の方なのだが。
シルバはニヤリと笑みを浮かべ、水面に向かって攻撃を開始する。
「陸式雷の型:鳴神」
雷の槍が水面に触れた途端、水に浸かっていたヒュドラは絶叫した。
「「「・・・「「ギャァァァァァ!」」・・・」」」
「もう一度だ。陸式雷の型:鳴神」
「「「・・・「「ギャァァァァァァァァァァ!」」・・・」」」
「おまけ。陸式雷の型:鳴神」
「「「・・・「「ギャァァァァァァァァァァァァァァァ!」」・・・」」」
三度感電させられたことにより、ヒュドラの9本の首が豪快な音を立てて水に突っ込んだ。
今までの流れを見ていたアリエルは真剣な表情で口を開く。
「時々思うんだ。シルバ君って隠れドSだよね」
「それはわかる。クレアやアリエルみたいなオープンなやつとは別の怖さがある」
「ん? 今何か言いました?」
「いいえ、なんでもございません」
ロウは余計なことを言ってしまったと口にチャックをした。
「レイ、凍らせちゃって」
『は~い』
シルバはアリエルとロウの会話をスルーしつつ、レイに自分のプランを成功させるべく次の指示を出した。
レイの
それだけに留まらず、雷でダウンしたヒュドラの首も水に触れていたせいで凍えた。
「再生するなら再生する以上にダメージを与えれば良い」
シルバはそう言いながら、熱尖拳タルウィと渇尖拳ザリチュを召喚して両手に装着した。
レイの背中から跳躍したシルバの狙いは、がら空きになったヒュドラの胴体だ。
「肆式火の型:祭花火」
容赦なく放たれる火を纏ったラッシュにより、ヒュドラの体は蜂の巣のように穴だらけになっていく。
それが<
これが決め手だと思った途端、アリエルがとても良い笑みを浮かべた。
「へぇ、傷口を燃やせば良いんだね」
「ヒュドラさん、負けフラグが立ちましたよ」
「ロウ先輩、どっちの味方ですか?」
「すみません! 真面目にやります!」
謝ったロウが何かをヒュドラに投げつけた。
投げつけた何かは球体であり、ヒュドラに触れた途端に棘が生えてヒュドラを突き刺し手から爆発した。
「ロウ先輩、なんですか今の?」
「研究部門で試作した投擲武器。その名もソーンボム。触れた物を突き刺してから爆発する消耗品だ。コストは高いが効果も大きいんだわ」
シルバの質問にロウがやってやったぜと笑って応じた。
「ロウ先輩ばかりに美味しい所を取られるのは癪です。リト、やっちゃって」
『うん!』
そうしている間に氷が融けて水になり、ヒュドラが動けるようになり始めた。
ボーナスタイムはここまでのようだ。
『『『・・・『『ド畜生がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!』』・・・』』』
怒り狂ったヒュドラがチョイスした技は
『学習してよね』
レイが冷たい声で
「終わりにしよう。弐式火の型:焔断」
シルバがヒュドラの真ん中の首目掛けて火の刃を放つと、今度は傷つけるどころか綺麗に切断することに成功した。
左右の首を落としてもすぐに再生するだけだったが、中央の首を刎ねたことでヒュドラは生命活動を停止した。
バシャンと音を立ててその体が水面に落ち、シルバ達はヒュドラとの戦いに勝利した。
(タルウィもザリチュも助かった。また強敵が現れたら頼むよ)
『またのご利用をお待ちしてるわっ』
『いつでも、歓迎』
熱尖拳タルウィと渇尖拳ザリチュを労った後、シルバは甘えて来たレイやアリエル達としばしの間だけ勝利の喜びを分かち合った。
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