第283話 畑の主だ! 畑の主だろう!? なあ 畑の主だろうお前! 野菜置いてけ! なあ!
午後、シルバとアリエル、レイ、リトは旧トスハリ教国領のモンスターファームにやって来た。
オロチ=フジがモンスターファームに侵入している可能性がないとも言えないので、その見回りと国境の壁の補強をするためだ。
エイルはマリアから今は製法が失われた薬品の調合を教わるため、ムラマサ城で留守番している。
シルバ達は最初に壁の点検を行う。
壁は岩製だったものを1ヶ月で鋼製のものに差し替えており、一重では不安だから三重にして簡単には壊せないようにしている。
一回りして確認したものの、壊された形跡や何か細工された形跡もなかった。
念のため、シルバはコンコンと叩いてその反響から異常がないことを確かめた。
「シルバ君のそれって隠し芸大会でやったらびっくりされるよね」
「まあ、叩いたことで物の状態を調べるって発想はマリアと俺ぐらいしかしないだろうからな。補足しておくと、俺にはできないがマリアは頭や脚でも同じことができるぞ」
「マリアさんすご過ぎでしょ」
「レインボー級モンスターを睨むだけで言うことを聞かせられるんだ。こんなことだってできるさ」
「それも常人には不可能なんだよね」
アリエルはマリアの底知れぬ強さに衝撃を受けた。
「マリアについて深く考えたら駄目だ。マリアはマリアという生き物として考えるべき。こっちに来たマリアと戦ってみて、俺はこの結論に達したよ」
「僕如きの小細工じゃ勝負にならないだろうな」
「そりゃ完璧には引っかからないだろうけど、意表を突くことぐらいはできるんじゃね? マリアってアリエル由来の手で攻めた時に若干反応が遅れるし」
「それはシルバ君がダーティーな攻め方をしたことに驚いてるのであって、なんでもありな僕と戦うってわかればマリアさんは微塵も隙を見せないと思うよ」
アリエルの考えは正しい。
シルバがアリエルの真似をして攻撃した時、反応が若干遅れるのはシルバもこんなやり方で攻めるのかと驚いてしまい、それが原因でマリアの反応が少しだけ遅れるのだ。
アリエルのように最初から何をしでかすかわからない相手と対峙すれば、マリアはアリエルの好きにさせることはないだろう。
壁の確認も終わったので、シルバ達はモンスターファームにいるモンスターの状況を確認することにした。
シルバーブルの区画に移動すると、シルバーブルはレイを恐れてシルバ達から遠ざかる。
<
レイはシルバーブル達に恐れられて得意気に胸を張る。
『フフン、控えろ~』
「「「・・・「「モモォ」」・・・」」」
シルバーブル達は逆らえば死ぬと思っているらしく、おとなしく
「ピヨッ」
「シルバーブル達はリトに頭を下げてるんじゃないよ」
「ピヨ?」
「もうちょっとで進化できると思うから一緒に頑張ろうね」
自分に対してシルバーブル達が頭を下げていると勘違いしたリトに対し、アリエルは優しくその頭を撫でた。
リトも進化さえすれば自分の勘違いが現実になるはずと気合を入れ直した。
この場に居続けるとシルバーブル達に過度なストレスを与えてしまうと判断し、シルバ達は次の区画へと移る。
次にシルバ達が訪れたのは放置栽培陣を施した畑だ。
ボムポテトとクフトマト、ソードリーキを定期的に収穫しては種を蒔いているため、そちらに再生する力を分け与え続けているデーコンはなかなか復活できない。
デーコンは搾取され続ける仕組みの放置栽培陣だが、今日はこちらに先客がいた。
放置栽培陣をじーっと見つめるそのモンスターは翼を生やした牡牛だった。
「こいつはどこから紛れ込んで来たんだ?」
「スロネ王国かアルケス共和国しかないね。スロネ王国でこのモンスターの目撃証言はないみたいだから、アルケス共和国の可能性が高いよ」
アリエルは素早くマジフォンの掲示板の履歴を漁り、目の前にいるモンスターがスロネ王国から流れ込んできた可能性が低いと告げた。
シルバはアリエルの話を聞きつつモンスター図鑑機能を使い、翼を生やした牡牛がゴールド級モンスターのグガランナであることを突き止めた。
「ピヨ!」
「リトがここは自分に任せてほしいって言ってる」
「格上だけど大丈夫か?」
「危なかったら僕がフォローするから、ここは僕達に任せてくれない?」
「わかった。気を付けて戦ってくれ」
「ありがとう」
リトが進化するための踏み台に丁度良いと考え、シルバはグガランナの相手をアリエルとリトに任せることにした。
『畑の主だ! 畑の主だろう!? なあ 畑の主だろうお前! 野菜置いてけ! なあ!』
言いたいことだけ<
「ピヨッ」
リトが一鳴きした直後、暗黒の穴がアリエルの前に現れて鋼の刃を吸い込んでから消えた。
これは<
創る穴の大きさによって消費MPが異なるから、リトは
リトは<
『小賢しか! 喰らえ!』
遠距離攻撃は防がれてしまうと考え、グガランナはリト目掛けて
「ピヨヨ」
リトは
重量のあるグガランナの体は急ブレーキすることもできず、そのまま3枚の火の壁に突っ込んでしまった。
『女々しか!』
グガランナは
「ピヨ~」
リトは逃げることなくグガランナに向けて
グガランナの影から黒い棘が飛び出し、グガランナの突進を邪魔すると同時に串刺しにする。
これはグガランナにとって痛手だった。
来るとわかっているダメージならば耐えられなくもないが、腹の下という体の構造上把握できない位置からの不意打ちはグガランナに想定外の一撃である。
突撃の勢いも止められてしまい、グガランナは動かない的と言っても過言ではない。
「ピヨ!」
リトは慢心してグガランナに接近すればやられる可能性があるから、距離を保ったまま
グガランナは致命傷を負ってすぐには動けず、
グガランナを倒したと確信し、リトはその場で踊り出す。
「ピッヨ~、ピッヨ~、ピッヨ~ヨ~♪」
「ご機嫌だね、リト。格上の討伐おめでとう」
「ピヨ♪」
アリエルに褒められてリトは嬉しそうに頬擦りした。
それから、グガランナを解体してアリエルはリトに金魔石を与える。
リトが自分の力だけで倒したグガランナの魔石を欲しがるのは当然であり、リトの体も金魔石を欲していた。
リトがアリエルから金魔石を与えられて飲み込むと、リトの体が光に包み込まれた。
光の中ではリトのシルエットが変わり、ただのモフモフな雛から王冠を被った雛の外見へと変わった。
光が収まると、山吹色の毛に覆われて王冠を被ったモフモフな雛の姿をしたリトが現れた。
シルバは体表と王冠以外に見た目に変化がなかったため、それ以外の違いを知るべくマジフォンのモンスター図鑑機能で調べてみた。
-----------------------------------------
名前:リト 種族:モフトリスキング
性別:雄
-----------------------------------------
HP:A
MP:A
STR:A
VIT:A
DEX:A
AGI:A
INT:A
LUK:A
-----------------------------------------
スキル:<
<
状態:ご機嫌
-----------------------------------------
(ちゃっかり<
シルバがリトのデータを確認しているのと同様に、アリエルもリトのデータを確認していた。
そして、<
「リト、何か喋ってみせて」
『アリエル、僕をモフモフして良いよ』
「おぉ。ありがとう」
「ピヨ♪」
(キングに進化してもリトはリトだったわ)
コカトリスからモフトリスキングに進化しても、リトはアリエルのモフモフ従魔としての立ち位置は忘れていなかった。
時間はかかったけれど、これでレイとマリナ、リトの3体全てが進化できた。
レイ達がムラサメ公国にいる時点で、ディオニシウス帝国に従魔の数では劣るけれど、従魔の質では劣ることはないことは断言して良いだろう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます