第270話 我慢するよ。レイは順番を守れるドラゴンだもん
マリナが海に潜って見た光景は、共にやって来た水棲型モンスターを1体のモンスターが見境なしに捕食している姿だった。
突然、渦巻が30m先で発生し始めたため、シルバ達は急いで空へと離脱した。
『あの渦巻の中心に奴がいます』
マリナの言葉に釣られてシルバ達が視線を渦巻の中心に向けたところ、そこには赤黒くて巨大なチョウチンアンコウがいた。
「あーあ。カリュブディスじゃないの。あいつ、さっさと倒さないとこの海の生態系が崩れるわね」
マリアの嫌そうな表情付きのコメントを受け、そのレベルの大食いなのかと戦慄しながらシルバ達はマジフォンのモンスター図鑑機能を起動させた。
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名前:なし 種族:カリュブディス
性別:雌
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HP:S
MP:A
STR:A
VIT:A
DEX:B
AGI:B
INT:A
LUK:A
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スキル:<
<
状態:空腹
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(HPがSだと? 持久戦は面倒だぞ)
シルバはモンスター図鑑で知った情報からうんざりした。
HPがS評価であり、<
更に言えば、<
持久戦になることは必至であり、マリアでも嫌がった理由がよくわかる。
カリュブディスはシルバ達が空を飛んでいるのを発見し、すぐに
「伍式雷の型:雷呑大矛」
シルバが味方を庇うように動き、カリュブディスが落とした雷を吸収した。
そのおかげで向上した身体能力を駆使し、シルバは空を駆けてカリュブディスに接近する。
カリュブディスは
『させませんよ』
マリナも同じく
波同士がぶつかった時には、シルバはそれらを迂回してカリュブディスに接近していた。
「陸式雷の型:
上半身のバネを活かしてシルバが右手を突き出すと、そこから雷の槍が飛んでカリュブディスに直撃する。
その攻撃がカリュブディスの口内を狙ったものであり、喉を突き抜ける程の威力だったのだが、<
しかも、<
それでも、回復中は動かなかったからレイが空中から追撃する。
『ご主人、援護するね!』
レイが<
相手が単独なら持久戦に持ち込んで自分に有利な状況にできるが、1対3ではやりにくい。
そう考えたカリュブディスは敵の数を減らしつつ、それでいて自分の腹ごしらえも済ませてしまおうと<
このスキルを使うことで提灯が明るくなり、その光を見た者が魅了されて自分の前に無防備な状態で誘導されてしまうのだが、シルバは即座に対策を実行していた。
「參式光の型:仏光陣」
シルバの背後に後光が差す光の大仏が現れ、カリュブディスの提灯によって誘惑するのをインターセプトしたのだ。
<
必ず邪魔なシルバを排除せんと<
『やらせません!』
「參式水の型:流水掌」
マリナが
シルバは咄嗟に參式水の型:流水掌を発動できたから、
「マリナ、助かったよ。ありがとう」
『とんでもないです。こちらこそ咄嗟に合わせていただき感謝します』
マリナは自分が乱暴なやり方を選択したにもかかわらず、シルバがそれに合わせてくれたことにホッとした。
シルバ達が1ヶ所にまとまったのを見て、今度はカリュブディスが
『無駄だよ』
レイがマリナにばかり活躍させるものかと対抗し、
自分が放った攻撃が自分に跳ね返って来てダメージになったため、カリュブディスの怒りのボルテージが上がる。
頭に血が上ったせいなのか、カリュブディスは再び
ただし、最初と異なるのは単発じゃなくて連発したことだ。
しかしながら、シルバには単発だろうと連発だろうと関係ない。
「伍式雷の型:雷呑大矛」
またしてもシルバが味方を庇うように動き、カリュブディスが落とした雷を全て吸収してみせた。
連発ならば攻撃が通じるのではと考えていたけれど、カリュブディスの作戦は今回も失敗に終わった。
これではただシルバを強化しただけなので、カリュブディスもここに来て焦り始める。
その一方、シルバは次の攻撃で致命傷を与えるべく、熱尖拳タルウィと渇尖拳ザリチュを召喚して装着する。
『あいつのことを茹で上げてやるわっ』
『湿気、大敵。乾燥、希望』
熱尖拳タルウィと渇尖拳ザリチュは海で水棲型モンスターと戦うのはアウェーだけれど、それを理由に彼女達の役割をボイコットするなんてあり得ない。
むしろ、逆境で一発逆転みたいな展開は大好物らしく、熱尖拳タルウィも渇尖拳ザリチュもやる気満々である。
「僕も援護するよ」
アリエルはシルバが確実にカリュブディスに攻撃できるように、
カリュブディスは
だがちょっと待ってほしい。
これでもかと強化した敵がいるにもかかわらず、その敵が見えなくなるぐらい大きな波で視界を遮るのは選択として正しいだろうか。
いや、絶対に正しくない。
カリュブディスの失策を隙に変えるべく、マリナが
目の前で泡が破裂する衝撃が地味に鬱陶しく、カリュブディスは目を開けていられなくなった。
『レイもやる~』
レイは先程会得した
これでカリュブディスは身動きが取れなくなり、隙だらけの状態が完成した。
「みんな、ありがとう。肆式雷の型:雷塵求!」
カリュブディスの死角に宙を蹴って接近し、シルバが熱尖拳タルウィと渇尖拳ザリチュを使って雷を纏ったラッシュを放つ。
伍式雷の型:雷呑大矛のおかげで威力が大幅に上昇している今、一撃だけでも大ダメージになる。
<
その結果、体の再生が追い付かずに最後の一撃で大きな風穴が開いたままカリュブディスは力尽きた。
マリナが海の中に潜り、後続の敵影がないことと異界に繋がる穴が閉じられたことを確認すれば、この場における割災は終わりだ。
シルバが熱尖拳タルウィと渇尖拳ザリチュを送還し、てきぱきと魔石を取り上げたところにアリエル達を乗せたレイやマリナが寄って来る。
「お疲れ様。レイ、クラーケンの魔石はあげたから、カリュブディスの魔石はマリナにあげるぞ?」
『我慢するよ。レイは順番を守れるドラゴンだもん』
「よしよし、レイは偉いな。エイル、これをマリナに」
「ありがとうございます。マリナ、よく頑張ってくれましたね。これを受け取って下さい」
『いただきます』
マリナのパワーアップを終え、シルバ達はムラマサ城へと戻った。
その時には第二騎士団に割災の鎮圧完了の連絡を済ませており、ついでに倒したクラーケンとカリュブディスだったと知って各騎士団長が絶句したのは別の話である。
なんにせよ、マリアが改造したマジフォンの割災予報機能とモンスター図鑑機能は大変優秀であり、ムラサメ公国の割災対策が大幅に前進したのは間違いない。
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