第192話 バレたか。やれやれ、優秀過ぎる学生ってのは怖いなー
入学試験翌日、シルバはアリエルとレイと共に登校した。
B3-1の教室には既に他のクラスメイトが集まっていた。
「よう、シルバ。昨日は入学試験の手伝いお疲れさん。面白い奴はいたか?」
「ヨーキ、おはよう。何人かいたけど
「ふーん、レイピアか。シルバの目に留まるぐらいなら合格するだろうし、一度手合わせしてみたいな」
「手合わせするのはあの受験生が強くなってからにしてやれ。
「それもそうだな。いやぁ、3年生になった時点で
ヨーキは悔しそうに言うが、戦闘コースの3年生が
シルバとアリエルが異常なまでに昇進しているだけで、ヨーキだって例年から考えれば十分期待の星だ。
というよりも、B3-1の学生は全て
惜しくも
悔しがっているヨーキに対し、レイは元気づけてあげようと声をかける。
『ヨーキならきっとすぐに昇進できるよ。頑張れ』
「レイちゃんマジ天使! ありがとう!」
レイからのエールを受けてヨーキはやってやるぞと気合が入った。
そこにポールがやって来た。
「ほらー、席に着けー。ヨーキどうしたー? 何か変なもんでも食べたか?」
「食べてないです! レイちゃんに応援されて気合が入っただけです!」
「お、おう。そうか。わかったから座れ」
レイに応援されただけで煩いと思うぐらい気合が入ったヨーキを見て、ポールはこいつって本当に単純だなと苦笑しながら席に座るよう促した。
「さて、お前等に今年から始まる制度について説明する。師弟制度だ」
「先生、質問良いですか?」
「タオか。質問とは珍しいな。何が訊きたい?」
「クラブ活動の先輩後輩関係と師弟制度の違いはなんでしょうか?」
タオの質問にB3-1の学生達は確かに気になると頷いた。
今までの軍学校は同じクラブの先輩が後輩の面倒を見ており、程度に差こそあれど気に入った後輩に技術を受け継いでいた。
それが師弟制度の導入によってどう変わるのか気になるのは当然だろう。
「良い質問だ。師弟制度だが、
ポールは全員しっかり聞いておくようにと告げた後に師弟制度について説明を始める。
師弟の時間は教師が教えるのではなく、師匠である学生が与えられた時間を自由に使って弟子を育てるのだ。
師弟の時間の間、
この制度には2つの目的がある。
1つ目の目的は師匠になった学生が後進の育成を考えることで人の上に立つことを学ぶというものだ。
クラブ活動だとどうしてもクラブ長や副クラブ長が下級生をまとめるから、上級生の中にはどうしても人の上に立つ機会がないまま卒業する学生もいる。
そんな学生が
だからこそ、学生の時から人の上に立てるような機会を設けた訳だ。
2つ目の目的は
教師の数が限られている以上、残念ながら学生1人あたりに充てられる指導時間は多いとは言えない。
軍学校を卒業する生徒の内、その割合が最も大きいのは実は
この層を強化して
ちなみに、師匠である学生が持てる弟子の人数だが、階級に限らず1人だけだ。
これだけでは
師匠は弟子が昇進したらそれを自身の功績として評価されるのだ。
そうすれば自身の功績のためにも師匠になった学生が弟子の育成に気合を入れるだろう。
以上の説明を聞いた後、シルバが手を挙げた。
「シルバか。何かわからないことがあったか?」
「わからないことではありません。この師弟制度ですが、ハワード先生が考えたものですか?」
「なんでそう思う?」
「師弟制度によって学生の育成効率が上がるからです。それに教師陣の負担が減りますからハワード先生が考えたんじゃないかと考えました」
シルバに言われてクラスメイト達があり得ると頷いた。
ポールが優れた教師であることは知れ渡っているが、それと同時に面倒臭がりだということも知れ渡っている。
ポール以外に師弟制度を思いつきそうな教師もいないため、アリエル達もシルバが言った通りでポールが師弟制度の導入を提案したのだろうと思った。
「バレたか。やれやれ、優秀過ぎる学生ってのは怖いなー」
『そうだよ! ご主人は優秀なんだよ!』
レイはシルバが褒められたことで胸を張ってドヤ顔になった。
レイの存在はB3-1の癒しになっていたので、レイのドヤ顔を見て顔がデレデレになっている学生がちらほらいるのも仕方あるまい。
「まあ、それは置いといてシルバとアリエルには弟子の募集条件を準備してもらうことになる。弟子になるにあたって最低限満たしといてほしい条件があれば、この紙に書いて俺に提出すること。なければないと書いてくれれば構わんが、今日中に提出してくれ」
「はい」
「わかりました」
ホームルームが終わり、午前は座学の時間に移った。
今日の座学は戦術論であり、過去に起きた戦争からどうすれば被害を最小限にできるか考えることがテーマだった。
チャイムが鳴って昼休みの時間になると、シルバ達は食堂に向かった。
昼休みが終わったら学生会に向かう予定になっていたので、シルバとアリエル、レイだけで昼食を取る。
「シルバ君は弟子に求める条件を決めた?」
「決めた。アリエルは?」
「決めたけど該当者がいないかも」
「どんな条件にしたんだよ」
アリエルが設定した条件が厳しそうだと思い、シルバはどこまで教える前の弟子に求めるのか気になって訊ねた。
「僕に従順であること」
「最初から厳しくね?」
「そうかな? 反抗するぐらいなら弟子にならないでくれって意味で入れたんだけど」
「師匠の教えを素直に受け入れられることって意味ならわかるんだけど、アリエルの場合違う意味に聞こえるんだよなぁ」
学生を中心に他者の弱味を握っているアリエルをシルバからすれば、アリエルに従順であることが弟子になる最初の条件と聞いてハードルが高いと思うのも当然だ。
「勿論その意味で設定してるよ。まあ、シルバ君が思ってる意味も含まれてるけど」
「やっぱり。それで、次の条件は?」
「魔法系アビリティを会得してること。<
「それは頷ける。自分が教えられるアビリティ持ちだと教えやすいもんな」
アリエルが定めた最初の条件に2つの意味が込められていたため苦笑したシルバだったが、次に求める条件は自分も考え方は同じだと頷けるものだった。
「まだ条件を設定してる?」
「うん。入学試験あるいは期末試験で成績上位10位以内に入ってること」
「おぉ、また範囲を狭めるねぇ」
「僕の教えを理解できる頭が付いてないと教えても無駄だもん。これぐらいの足切りは必要条件だよ。シルバ君はどんな条件を設定したの?」
アリエルは自分の条件を全て言い切ったから、逆にシルバの条件について訊ねた。
「俺の条件は2つだ。<
「あぁ、シルバ君らしいね。2つ目の条件だけどさ、根性って結構抽象的じゃない? 具体的にはどれぐらい忍耐力があれば良いの?」
「俺がマリアから与えられた自主トレを毎日続けられるぐらいかな」
「僕が言うのも変な話だけどさ、シルバ君も結構ハードル上げてるよね」
「そうか? 多分すぐ決まると思うけど」
どうだろうかとアリエルはシルバに2つ目の条件の詳細を聞いて苦笑した。
シルバにとっては日常かもしれないが、常人にとってはハードなトレーニングだからアリエルの反応は正しい。
結局のところ、一般人から見てシルバの弟子になるのもアリエルの弟子になるのも一筋縄ではいかないようだ。
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