第186話 くっ、これが主天使級か。どれだけ先に行くんだ
ブラックセンチピードの魔石はレイが貰い、レッドアントの群れの魔石はマリナが貰った。
「未発見の横穴はレイとマリナのパワーアップに丁度良いな」
『うん! レイはどんどん強くなるよ!』
「チュル♪」
シルバに言われてレイもマリナもご機嫌な様子で応じた。
「虫型モンスターが多いとはいえ、卵生モンスターなんだからどこかに巣があってもおかしくないよ。早くロウ先輩がテイムする従魔を探さないと」
「アリエル、俺は虫型モンスターをテイムしないからね? おっと、俺は虫じゃないと先に言っとくぞ」
ロウはアリエルがなんと返答するか予想できたから、それを事前に封じるように手を打った。
2人のやり取りはロウの対策によってすぐに終わり、シルバ達は戦利品回収を済ませて先へと進む。
先に進むにつれて壁の色が濃くなっていき、現れるモンスターにも変化が出て来るようになった。
「ゴブ?」
「ゴブゥ?」
「ゴブゥゥゥゥゥ!?」
「ゴブリンじゃないな。赤い帽子のレッドキャップだ」
「シルバ君、僕は見たことないんだけど強いの?」
「1体あたりゴブリン10体分の強さだ」
「3体いるってことはゴブリン30体ってことだね」
「そうなるね」
レッドキャップは異界に行ったことがないアリエル達にとって初見の存在であり、シルバしかその存在を知らなかった。
それでも、シルバがその強さを把握しているおかげでアリエルは大して動揺することなく迎撃し始めた。
「人型との接近戦は貴重だな。シルバ、1体貰うぞ」
「どうぞ。アリエルもサルワを使って戦ってみたら?」
「わかった」
トンファーを構えて迎撃するロウに感化されたらしく、アリエルもシルバに言われて騒乱剣サルワを鞘から抜いた。
残る1体は正面から向かって来るので、シルバがそれをすぐに倒すべく攻撃を仕掛ける。
「弐式光の型:光之太刀」
光の刃が頭部と胴体を離れ離れにしたことで、レッドキャップはシルバに攻撃する余裕もなく倒れた。
ロウが細かくダメージを重ねているのを見てこちらは問題ないと判断し、シルバはアリエルの戦闘を見守る。
アリエルはシルバから剣の使い方を習っており、毎日素振りや騒乱剣サルワを使った模擬戦を擂るようにしている。
それに加えて騒乱剣サルワもアリエルにアドバイスを囁くから、レッドキャップが
「ゴブッ、ゴブ?」
どうして当たらないんだとレッドキャップが悪態をつくが、レッドキャップが何を言っているかなんて実際のところはわからないから反応せずにアリエルは反撃に出るタイミングを待つ。
レッドキャップの動きをじっとチェックしてから、ここだと思うタイミングでアリエルは反撃に出る。
「そこ!」
「ゴブゥ!?」
騒乱剣サルワが今がチャンスだと言えば、アリエルはその指示に従ってどんどんレッドキャップを斬りつける。
6回連続で斬りつけた結果、レッドキャップは立っていられなくなってその場に倒れた。
「ふぅ、魔法なしで戦えたぞ。シルバ君、倒せたよ」
「おめでとう。しっかり見てたぞ」
シルバに褒められてアリエルは剣の扱いが着実に上手くなっていることに満足した。
レッドキャップの死体はゴブリンとの違いを研究するべく、全て持ち帰ることにした。
ただし、レッドキャップの死体を運びながら卵生のモンスターの卵を回収するのは難しい。
それゆえ、シルバはレッドキャップの死体を廃坑外の馬車に運ぶようにロウとアリエル、エイルに任せ、この先の探索は自分とレイでやると告げた。
レッドキャップの死体を置いて帰ることはあり得ないから、アリエル達もその判断に賛成した。
『もっと骨のある敵はいないのかしらっ』
『強敵、カモン』
「余計なことは言わんでよろしい」
熱尖拳タルウィと渇尖拳ザリチュが周りに自分達しかいないので喋り出し、シルバは変なフラグを立てないでくれと苦笑した。
しかし、そのシルバの願いは残念ながら聞き届けられなかった。
シルバ達の前に地面を掘ってシルバを丸呑みできるサイズの茶色い蚯蚓が現れたからだ。
その蚯蚓の口は尖った歯がぎっしり並んでおり、噛んで飲み込むつもりとしか考えられない。
「マジか。こっちでワームを見ることになるなんて」
『ご主人、ワームって強いの?』
「動植物も石も関係なく食べるしタフなんだ。前はマリアと一緒にいたから瞬殺できたけど、俺達だけで瞬殺できるかな」
『こういうのを待ってたのよっ』
『歓喜』
フラグが回収されて熱尖拳タルウィと渇尖拳ザリチュは喜んでいた。
ワームはシルバ達を感知して捕食しようと襲い掛かる。
「壱式水の型:散水拳!」
シルバは拳から水を飛ばしてワームに当てるが、ワームはそれをものともせずに接近を続ける。
これには本気でやるしかないと判断してシルバは熱尖拳タルウィと渇尖拳ザリチュを装着した。
「壱式光の型:光線拳!」
熱尖拳タルウィを装備した右手から攻撃を放てば、それが命中したワームは怯んだ。
それもそのはずで、シルバが素手で攻撃した時よりも威力が上がり火傷を負わせられたからである。
「弐式雷の型:雷剃!」
今度は渇尖拳ザリチュを装備した左手で攻撃し、ワームを乾燥状態にさせる雷の斬撃を当てた。
これには余裕な態度を取っていられず、ワームは
『防御は任せて!』
レイが自分を忘れてもらっては困ると
自分の攻撃で怯んでしまったワームは丁度良い的でしかないから、シルバは接近して次の技を仕掛ける。
「肆式雷の型:雷塵求!」
雷を纏わせた両手を素早く交互に突き出し、ワームの体に何度も熱尖拳タルウィと渇尖拳ザリチュが突き刺さる。
体内に雷が流れるだけでなく、熱と渇きの追撃まで入ればいくらワームがタフでもただでは済まない。
体内から燃えて水分は失われ、ワームの体はどんどん萎れていった。
地面と触れるだけで火傷が痛く、雷による痺れも発生して満足に体を動かせない。
そんな状態のワームでも油断ならないから、シルバはきっちりととどめを刺す。
「肆式雷の型:雷塵求!」
もう一度同じ攻撃を喰らえば、ワームは音を立てて地面に倒れた。
『勝利なのよっ』
『勝利』
熱尖拳タルウィと渇尖拳ザリチュがもしも人間だったらドヤ顔になっているに違いない。
それらを外したシルバは抱き着きたくてうずうずしているレイに向けて両手を広げる。
『ご主人、勝ったね!』
「よしよし。レイの
甘えるレイが満足するまで優しく撫でた後、シルバはワームの魔石をレイにあげてからワームの死体を丸ごと回収してアリエル達と合流することにした。
横道から出て知った通路を通り、サバーニャ廃坑の外に出たところでアリエル達は馬車にレッドキャップの死体を積み終えて一息ついていた。
そこにシルバがワームを担いで出て来るものだから、アリエル達が口を大きく開けたのは言うまでもない。
「シルバ君、何それ? いや、モンスターなのはわかるけど」
「こいつはワーム。雑食でタフな虫型モンスターだ。滅多に見ないから持って帰って来た」
「シルバ、怪我はないんですよね?」
「大丈夫。連戦はキツいけどこいつ単体なら無傷で倒せるから安心して」
「くっ、これが
シルバがエイルの心配に問題ないと答えると、ロウはシルバがどこまで先を進んでいるのかわからなくて悔しがった。
「シルバ君、これ以上馬車には載せられないし帰還する?」
「そのつもりだ。モンスターの卵は手に入れたいけど、流石にこれ以上の成果を一度に望むのはリスクが大きい。ここは一旦戦利品を持ち帰るべきだ」
「賛成」
「わかりました」
「異議なし」
満場一致で帰還することが決定し、シルバ達は馬車に乗ってディオスに帰還した。
サイズの都合上、ワームの死体は馬車の屋根に括りつけて来たため、ディオスではシルバ達がまた何かやらかしたと大騒ぎになるのは仕方のないことだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます